「あはは、それはどうかな?海!」

海と言う名前に私はゾッとした。

だってその名前の女の子、私の敵だし。
チャームポイントであるツインテールは、今は『鬼の角』のように見えるし。

いつも私のことを考えてくれる川下海(カワシタ ウミ)ちゃんだけど、そのせいで酷い目に何回もあっているし。
『私を喜ばせたいから』って、よくいじめて来るし。

って言うか海ちゃん、いつの間に背後からもう私を抑えているし。
勝手に服の上から私の胸を鷲掴みにしているし。

・・・・・・。

ってもうやめて!

「こら海ちゃん!勝手に胸を揉まないで!ってか犯罪!痴漢!」

海ちゃんは手を止めずに笑う。

「まあいいじゃん、どうせ空ちゃんには胸はないんだし。さあ、今から空ちゃんをたっぷり痛めつけるぞ!直美お姉ちゃんや凪にされた恨み、ここで全部晴らしてやる」

『直美お姉ちゃん』や『凪』って誰?

多分海ちゃんの姉妹だと思うけど、その恨みを私にぶつけるのだけは本当にやめてください。

千尋さんも『お姉ちゃんの恨み』って言って私に攻撃して来るし。
私、サンドバックじゃないんだし。

・・・・・・。

ってか胸がないなんて言うな!

喧嘩売ってるのかこらあ!

「もう怒った!海ちゃん、絶対に許さないから!あと孝太くんも!」

孝太くんを横目で睨むと、私は全力で抱きついて来る海ちゃんを振り払った。
まるで喧嘩でもするように、激しく海ちゃんから離れようとする。

怒った顔で、私は海ちゃんと押し合って戦う。

海ちゃんも私に負けじと私に抵抗するけど・・・・・・。

「きゃあ!」

海ちゃんはその可愛い悲鳴と共に足を滑らした。
そして自滅するかのように、私から離れてくれる。

・・・・・。

ざまあみろ!

慣れないヒールなんか履いているからだ!

「ばーか!私、意外と強いんだぞ!」

決して私は強いとも思わないし、実際喧嘩も勝負も強くないけど、これを『勝負』というなら私の勝ちだ。
『海ちゃんより、私の方が強い』ということが証明された瞬間だった。

だから誇らしげに、イヤミがあるように私は海ちゃんを挑発したけど・・・・・。

それはある意味、『私美柳空は喧嘩相手を募集している』とも捉えられるだろう。

例えばこんな風に・・・・・。