「じゃあかのんがそらちゃんを捕まえよっと!『かのんの犬』にしてあげるね!」

最初に声をあげたのは、私の友達の小坂花音(コサカ カノン)ちゃんだった。
高校生なのに校則違反の金髪を揺らす、元気一杯の女の子。

かなり変わった、燐ちゃんの事が大好きな友達想いの女の子。
何度も私はその明るく破天荒な性格に笑わせてもらったっけ。

ってか犬じゃない!

「花音ちゃん!意味のわからないこと言わないで!もう!」

その花音ちゃんが私を捕まえようとするから、私は花音ちゃんを避けようと逃げる。

でも花音ちゃんから逃げても、他の野獣が追いかけて来る。

燐ちゃんに簡単に捕まってしまう。

「空、捕まえた!真奈美さんにいじめてもいいて言われているから、朝までくすぐっちゃおうかな?最近の空、すっごく可愛いし!ってかさっきの空の攻撃、痛かったし」

そう言って正面から私を抱えるように捕まえるのは、友達の北條燐(ホウジョウ リン)ちゃん。
モデルさんのように綺麗で可愛い、心優しい女の子。

でもちょっと傲慢な一面もある困った子だ。
最近の燐ちゃん、すぐに誠也さんや真奈美さんのように私をからかおうとするし。

ってか、『痛かった』って・・・・・。

「もう燐ちゃん!・・・・・ごめんなさい」

捕まりながら謝る光景はなんだか変だと私は感じたけど、それはそれだ。
今の燐ちゃんは敵であることは間違いない。

敵だったら逃げないと。

「あっこら!空逃げるな!」

一瞬の隙を見て私は燐ちゃんから離れると、また逃げる。
広い店内を見渡しながら、敵の居ない方に向かって逃げようとした。

けど・・・・・。

・・・・・。

私はいつの間にか大きな体の男の子の目の前で足を止めていた。
現在海ちゃんと付き合っている、高校生とは思えない落ち着いた男の子。

私の友達で、男らしい少年の高林孝太(タカバヤシ コウタ)くん。
でも実は笑顔が可愛い孝太くん。

そんな孝太くんは、呆れた顔で私に問い掛ける。

「何だよ?俺にいじめられにきたのか?」

「ち、違う!」

「まさか、俺ならお前を捕まえたりしないって言うんだろ?」

「う、うん」

孝太くんの元に来た理由を当てられたから、私は小さく頷いた。
だって孝太くん、今まで私に攻撃してきたことないし。

今日くらいは、かわいそうな私の味方になってくれると思うし。

・・・・・・・。

でも、孝太くんは突然笑い出す。

『俺は空の敵だ』と教えてくれる。

自身の彼女に合図を送って、私を捕まえる。