カフェのような落ち着いたBGMが店内に流れている。
あまり感じたことのない空気に、逆に落ち着かない私。

店内にはあまりお客さんはいない。
遠く離れた席に、四人の若い女性がが楽しそうに食事をしているだけ。

普段はもっとお客さんが入るのだろうか?

客席からはキッチンの様子が見えて、料理している女性が見えた。
真奈美さんとは違う女性。

変な言い方だと思うけど、ちょっとポッチャリした優しそうなおばちゃん。

でもなんだか誠也さんに似ている気がする。
もしかして、誠也さんのお母さん?

「ここ、誠也さん家族のお店なんですか?」

携帯電話を触っていた誠也さんは私の質問にすぐに答えてくれる。

「そう。母さんが始めたイタリアン。ちなみに今は妹の真奈美が店長だよ。母さんもキッチンにいるけどね」

ってことは、キッチンの女性が誠也さんのお母さん。
私の勘は合っていたようだ。

後で挨拶に行った方がいいのかな?
「誠也さんと真奈美さん。兄妹揃って料理人なんですね」

誠也さんは小さく頷きながら答える。

「確かにそうだな。真奈美がこの店を継ぎたいって言うから、俺も好きなことを学べるし。真奈美には感謝しているよ 。俺も寿司を学ぶことが出来たし」

そういえば誠也さんがお寿司屋で働く理由、私はまだ聞いてない。

「どうして誠也さんはお寿司屋さんになろうって思ったのですか?」

誠也さんは笑って意味のわからない言葉を言う・・・・。

「そりゃもちろん、空ちゃんと出会うためだよ」

誠也さんのこう言う所は正直言って嫌い。
いや、嫌いじゃないんだけど、なんて言葉を返したらいいのかわからない・・・・。

だから無意識に、私の顔は真っ赤に染まっていく。

「せ、誠也さん!」

「ごめんごめん!冗談だよ冗談!」

そう言うと同時に、誠也さんは私の頭を撫でた。
私の怒りを沈めるように、優しい笑顔も見せてくれる。

でもそれがなんだかスッゴくバカにされた気分で、無性に腹が立つ。 

ホントにムカつく!