涙は止まる事はなかった。
みんなの前なのに、情けなく涙をこぼし続ける私。

拭いても拭いても、まるで壊れた蛇口のように涙が止まらない。
どうしても涙が止まらない。

止まらないからこそ、私は目の前の燐ちゃんに向かって飛びついた。
泣き顔を見られるのがイヤだったと言うのもあるけど、今は不思議と誰かの胸に飛び付きたかった。

大切な人の胸で泣きたかった。

だって私、もう一人じゃないはずだし。

ここにいてくれているみんなは、『私の仲間』なんだし。

お母さんもお父さんも、『悲しい事があったら無理せず泣いてみろ』って教えてくれたし。

頼れる人が側にいる事は、人生で一番幸せな事だし。

だから私、大きな声で泣き続けた。
みんなの前で、店内に私の声が響くほど泣き叫んだ。

燐ちゃんの胸で、声を枯らすほど大きな声で泣き叫んだ。

まるで、今まで溜まっていたものを全て吐き出すように。
辛い自分を吐き出すように・・・・。

そんな私の側に、みんないてくれた。
一生懸命、私を励ましてくれた。

そしてそれは目の前の燐ちゃんもその一人。

「空、ごめんね。あたし、バカだったから空を傷つけることしか出来なくて・・・・・」

その燐ちゃんの言葉を掻き消すように、私は全力で首を横に振って否定した。
まるで『それ以上は言わないで』と言うように。

だって、『違う』と思ったから。
過去はどうであれ、最近の燐ちゃんはずっと私を笑わせてくれるし。

ずっと私を支えてくれるし、どんな相談にも乗ってくれるし。

『私の味方』だし。

だから・・・・・。

「もう過去の話は禁止。私と燐ちゃんって友達じゃん。仲良しじゃんか」

溢れる涙を拭って、私は笑みを見せながら燐ちゃんの言葉を否定した。

申し訳ないけど、自身の過去を振り返る燐ちゃんの姿と、燐ちゃんが謝る姿を見たくないのが私の本音。

燐ちゃんと楽しい記憶しか思い出したくないのが本音。

だから、私は笑う。
笑顔を見せる。

まるで『私達って友達だよね?』って問いかけるように。

一方の燐ちゃんは納得してくれたのか、一度頷いた。
そして私に笑みを見せてくれる燐ちゃん。

私をぎゅっと抱きしめてくる燐ちゃん。
どさくさに紛れて、くすぐり攻撃を仕掛けてくる燐ちゃん。

・・・・・え?