「嬉しくないです」

投げやりに私は呟いた。
事実、『嬉しくない』から。

『私にとって誕生日はいい記憶がない』から。
嫌な記憶ばっかだから。

思い出したくない記憶ばっかりだから。

・・・・・・・。

その私の気持ちを、誠也さんは知っている。

「そう言うと思った」

誠也さんは私に笑みを見せると続ける。

「空ちゃん、最後に誕生日を祝ってもらったのっていつ?」

「覚えてないです」

私の即答に誠也さんは苦笑い。

「あはは・・・・。まあでも、俺が来てから空ちゃん、誕生日は祝ってもらってないもんね。将大さんも、あえて知らない顔をしていたし」

「そのように私がお父さんにお願いしたからです」

お母さんが亡くなった翌年の私の誕生日は、一応盛大にパーティを開いてくれたみたいだ。
武瑠も頑張って、私のためにパーティーを開催するお父さんやおばあちゃんの手伝いをしてくれたらしい。

でも主役の私は参加しなかった。
部屋に鍵をかけて、その日は一歩も部屋を出なかった。

みんなの気持ちを踏みにじり、早く次の日がくることだけを祈った。

ホント最低な私。

・・・・・・。

結局私、その日の自分の誕生日パーティは参加しなかった。
どれだけ家族に説得してもらっても、私の想いは変わらず・・・・。

そして次の年からは私の誕生日は祝われなくなった。
お父さんもおばあちゃんも、『去年の二の舞』になると思って諦めてくれたのだろう。

同時に私も自分の誕生日の存在を忘れるようにした。

だって私が生まれた『十二月二十五日』は、大好きなお母さんが亡くなった日でもあるし。
『そんな日、一生来なければ良いのに』って思っていたし。

その日が来ると、クリスマスという行事から嫌でも『お母さんの死』を連想させてくるし。

ってか、そんな日に私の存在を祝って欲しくないし。

・・・・・・・・。

そんな私に誠也さんは小さな紙包みを手渡す。
平たい正方形の形をした、青い紙袋に包まれた謎の物。

「将大さんから」

「へ?」

お父さんから?

・・・・・・え?

「開けてみて」

誠也さんがそう言うから、私は手渡された紙包みを開けてみた。
『お父さんからのプレゼント』だと置き換えた私は、無意識にプレゼントを開封していく。

・・・・・・・。

「うそでしょ・・・・?お父さん・・・・、お母さん」