無意識に再び溢れる私の涙。
ポタポタと、私の乾いた心を濡らす涙。

『悲しい時に泣けること』が、どれだけ幸せなことか、不思議とその言葉が染み渡る。

大好きな誠也さんが目の前にいるから、尚更。

「空ちゃんも気が付いたみたいだね」

そう言って誠也さんは、ポケットからハンカチを取り出すと私の目に浮かぶ涙をふき取ってくれた。

そして優しい言葉で私を包んでくれる。

「絶望に飲み込まれて『死にたい』と思った時、そこで一度でもいいから『もっと生きたい』と思ってみたら人生大きく変わると思うよ。涙も出てくるよ」

誠也さんは続ける。

「空ちゃんは充分頑張ったよ。『生きよう』と必死になって自分の居場所を探した。でも、結果は変わらなかった。結局は『死にたい』と言う気持ちは離れなかった。自分が一番辛い時に、大好きな人がいなかったら、誰だって死にたくなるもんね。俺も『空ちゃんを守ってあげられなかった』って思うと、すっごく辛かったし」

・・・・・・・。

「だから、そんな空ちゃんを俺が支えらたらなって、俺は思うんだ。俺の前なら、いっぱい泣いてもいいから。ずっとそばに居てあげるから。絶対に支えるから。俺が死ぬまで、いや、俺が死んでも空ちゃんを守るよ。もし子供ができても、子供と一緒にお母さんとなった空ちゃんを支えていくよ。『空お母さんは泣き虫なお母さんだ』って、子供と一緒に空ちゃんをからかうよ。それが今の俺の『夢』かな。寿司職人になりたいのと同時に叶えたい夢。だから俺と結婚して、『田中誠也のお嫁さんになってほしいな』って」

・・・・・・お嫁さん?
ってか誠也さん、さっきから『子供』とか、『空お母さん』とか何を恥ずかしいことを言ってるんだろう。

・・・・・・はい?

「せ、誠也さん!まだ」

誠也さんは私の言葉を上書きする。

「『まだ付き合ってもないし早い』って?まあいいじゃん。俺には空ちゃんしか居ないし。将大さんもいいて言ってくれたし」

そんなわけない!

「あ、あれはきっと冗談ですって・・・・・・」

「冗談じゃないよ。将大さん、嘘は嫌いだし」

「いや、絶対嘘ですって!私をからかうための嘘っていうか、なんていうか」

「じゃあ空ちゃんは俺のことが嫌い?」

「嫌いっていうか・・・・・その・・・」

「まあ嫌いだもんね。昔から嫌われていたし」

「だからそれは『嫌いじゃない』っていうか!ただ接し方がわからなかっただけって言うか・・・・・」

「じゃあ好きなんだ?」

この人、さっきからなんか変!