「ん?ああ、空に謝ることばかり考えていたから、『時計が見つかった』ってすっかり忘れていたな。ってか玄関に落ちていたぜ。空お前、靴を履く時に落としたんじゃないか?」
お父さんの言葉に誠也さんは苦笑い。
同時に呆れた表情も見せる。
「あはは・・・。ってか玄関ねえ・・・・」
一方の私はお父さんがつける『腕時計』を見て驚いていた。
その『腕時計』、いつもと違うところがある。
「時計、動いている」
「え?」
私の声にすぐに誠也さんもお父さんの『腕時計』を覗く。
一秒ごとに動く『時計の針』を見て、私と誠也さんは驚く。
そしてそうやって驚く私と誠也さんに、お父さんはまた優しく笑う。
「実はな、わざと動かなくしていたんだ。だから本当は壊れてなんかいない」
「どう言うこと?お父さん」
「さあな。俺にもよくわからねえ。でもこれは茉尋からの贈り物。アイツがくれた『誕生日プレゼント』だから、この時計を見たら茉尋を思い出すんだ。この時計が動いていると、『茉尋が生きている』って。『死んだ茉尋が俺を呼んでいる』って。変だと思うけど、俺にはそう感じるんだ。だから、俺はこの時計の針を止めたんだ。『茉尋が亡くなった悲しみ』を乗り越えるために。アイツとの記憶を思い出さないために」
それが動かない時計の真相だった事に、私と誠也さんは唖然としていた。
お母さんが亡くなってから、ずっと悲しむお父さんの声。
どんな時も私のために笑顔を貫き通す、お父さんの心の声。
そんなお父さんはまた笑う。
まだまだ知らないお父さんの声が聞こえてくる・・・・。
「まあでも、『よくよく考えたらそんなことをする必要はないかな?』って、今日気がついた。だって俺には空がいるんだ。武瑠もいるんだ。弟子の誠也もいるんだ。お前らがいるから、『どんな辛いことも乗り越えられる』ってようやく俺も気がついたし。だから『茉尋と過ごした思い出を、みんなで楽しく話せたらなー』って俺は思った。そうした方が、天国の茉尋も喜ぶだろうし。特に武瑠は、『茉尋との思い出』が何にもないからな。武瑠にも、『お前のお母さんはすごい奴なんだ』って、俺は伝えたいし」
そのお父さんの言葉の直後、その武瑠の声が聞こえてきた。
遠くの方から大きな声で呼ぶ、元気な武瑠の声。
「そらねえちゃーん!おとうさーん!」
「おっ、噂をすれば」
当時まだ幼稚園児の武瑠は、私たちの元まで駆け足でやってきた。
武瑠は私と違っていつも笑顔を絶やさない元気な男の子。
いつも暗い私を励まそうとしてくれる、強い私の弟。
ってか武瑠、暗闇の夜の中を一人で私を探していたのだろうか?
「あ、そらねえちゃんずるい!たけるもお父さんに肩車してほしい」
そう言いながら、武瑠は私を肩に乗せたお父さんの体を揺さぶった。
思わぬ武瑠の行動に、私は一瞬落ちそうになり、お父さんの表情が歪む。
「あーわかったわかった!ちょっと待ってろ!誠也、空を肩車してみるか?」
「え?俺っすか?あはは・・・」
誠也さんに肩車!?
・・・・・絶対に嫌!
「いいです!自分で歩きます」
そう言ってお父さんから解放された私は誠也さんから離れた。
同時に顔を赤く染める私・・・・・。
そんな私を見て、いつの間にか武瑠を肩車するお父さんは小さく笑う。
「何だ誠也、また空に嫌われたのか?」
「・・・・・みたいですね。はあ・・・・・」
誠也さんは肩を落とすと溜め息を一つ。
まるで、『さっきの俺の努力はなんだったんだろう』とでも言いそうな誠也さんの悲しい目。
誠也さん、勇気を出して辛い現状を語ってくれたのに・・・・。
・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・。
「え、空・・・・ちゃん?」
お父さんの言葉に誠也さんは苦笑い。
同時に呆れた表情も見せる。
「あはは・・・。ってか玄関ねえ・・・・」
一方の私はお父さんがつける『腕時計』を見て驚いていた。
その『腕時計』、いつもと違うところがある。
「時計、動いている」
「え?」
私の声にすぐに誠也さんもお父さんの『腕時計』を覗く。
一秒ごとに動く『時計の針』を見て、私と誠也さんは驚く。
そしてそうやって驚く私と誠也さんに、お父さんはまた優しく笑う。
「実はな、わざと動かなくしていたんだ。だから本当は壊れてなんかいない」
「どう言うこと?お父さん」
「さあな。俺にもよくわからねえ。でもこれは茉尋からの贈り物。アイツがくれた『誕生日プレゼント』だから、この時計を見たら茉尋を思い出すんだ。この時計が動いていると、『茉尋が生きている』って。『死んだ茉尋が俺を呼んでいる』って。変だと思うけど、俺にはそう感じるんだ。だから、俺はこの時計の針を止めたんだ。『茉尋が亡くなった悲しみ』を乗り越えるために。アイツとの記憶を思い出さないために」
それが動かない時計の真相だった事に、私と誠也さんは唖然としていた。
お母さんが亡くなってから、ずっと悲しむお父さんの声。
どんな時も私のために笑顔を貫き通す、お父さんの心の声。
そんなお父さんはまた笑う。
まだまだ知らないお父さんの声が聞こえてくる・・・・。
「まあでも、『よくよく考えたらそんなことをする必要はないかな?』って、今日気がついた。だって俺には空がいるんだ。武瑠もいるんだ。弟子の誠也もいるんだ。お前らがいるから、『どんな辛いことも乗り越えられる』ってようやく俺も気がついたし。だから『茉尋と過ごした思い出を、みんなで楽しく話せたらなー』って俺は思った。そうした方が、天国の茉尋も喜ぶだろうし。特に武瑠は、『茉尋との思い出』が何にもないからな。武瑠にも、『お前のお母さんはすごい奴なんだ』って、俺は伝えたいし」
そのお父さんの言葉の直後、その武瑠の声が聞こえてきた。
遠くの方から大きな声で呼ぶ、元気な武瑠の声。
「そらねえちゃーん!おとうさーん!」
「おっ、噂をすれば」
当時まだ幼稚園児の武瑠は、私たちの元まで駆け足でやってきた。
武瑠は私と違っていつも笑顔を絶やさない元気な男の子。
いつも暗い私を励まそうとしてくれる、強い私の弟。
ってか武瑠、暗闇の夜の中を一人で私を探していたのだろうか?
「あ、そらねえちゃんずるい!たけるもお父さんに肩車してほしい」
そう言いながら、武瑠は私を肩に乗せたお父さんの体を揺さぶった。
思わぬ武瑠の行動に、私は一瞬落ちそうになり、お父さんの表情が歪む。
「あーわかったわかった!ちょっと待ってろ!誠也、空を肩車してみるか?」
「え?俺っすか?あはは・・・」
誠也さんに肩車!?
・・・・・絶対に嫌!
「いいです!自分で歩きます」
そう言ってお父さんから解放された私は誠也さんから離れた。
同時に顔を赤く染める私・・・・・。
そんな私を見て、いつの間にか武瑠を肩車するお父さんは小さく笑う。
「何だ誠也、また空に嫌われたのか?」
「・・・・・みたいですね。はあ・・・・・」
誠也さんは肩を落とすと溜め息を一つ。
まるで、『さっきの俺の努力はなんだったんだろう』とでも言いそうな誠也さんの悲しい目。
誠也さん、勇気を出して辛い現状を語ってくれたのに・・・・。
・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・。
「え、空・・・・ちゃん?」