「俺と仲直りしようよ。空ちゃん、俺のこと嫌いなんでしょ?」

「嫌いってわけじゃ・・・・」

「じゃあ仲良くしようよ。それで将大さんに認めてもらえるように俺と競争しよう。それならどう?」

・・・・・・・・。

私は誠也さんと仲良くなりたい。

それにもっとお父さんに認めてもらいたい。

それが当時の私が少しだけ想像していた、未来の自分。
『そんな私になれたらいいな』って、当時の私は思っていたりもした。

でも・・・・・。

私はうまく自分の意思を伝えられない子供。
どうやってみんなと仲良くしたらいいのかわからない、鈍感な子。

なかなか素直になれない子供。

・・・・・・・・。

そんなダメな私の背中を誠也さんは押してくれる。

「茉尋さんが亡くなってからの将大さん、『気持ちの切り替えがうまくいけてなくて、よく落ち込んでいる』ってキヨさんも言っていた。だから、俺達で将大さんを支えていこうよ。俺も早く将大さんに認めてもらいたいしね」

その言葉を聞いて、『誠也さんも私と同じ思い』だというのはわかった。
だから、誠也さんがいたら私も一歩踏み出せるかもしれない。

でも・・・・。

自信がない自分がいるから、前に進めないのも事実。

「でも私、そんなことできるかな?」

その私の自信のない一言に、誠也さんは小さく微笑む。

「出来るよ。その為の競争でしょ?俺と一緒に頑張ろう」

「一緒に?」

「うん、一緒に。難しい?」

・・・・・。

「でもお父さん、絶対にまだ怒っている。お父さんに合わせる顔がない」

「そうかな?空ちゃんを怒った後、将大さんはメチャクチャ後悔していたよ。『空の気持ちを踏みにじってしまった』って」

「嘘だ」

「嘘じゃない。これは本当の話。その証拠にほら」

誠也さんはおもむろに、自分の携帯電話の画面を私に突きつけた。
それが何を示すのか『鈍感な私』にはよくわからなかったけど、その携帯電話から声が聞こえた。

それは今の私が一番聞きたくない、私の大好きな声。