お腹がいっぱい。
心の中でそう呟いた私は、今の時刻を携帯電話で確認する。

現在、午後の十一時十五分。
もうすぐ日付が変わる。

外は肌寒く、窓の外をよく見ると雪が降っていた。
積りはしないだろけど、この街で雪が降るのは珍しい。

店内にはもう私と誠也さんしか、お客さんは残されていなかった。
海ちゃんや燐ちゃん達も、もう夜遅いから帰った。

だから店内には私と誠也さん、それとキッチンにはコックコードを着る真奈美さんだけ。
さっきまでいた他の従業員も、みんな帰ったみたい。

ちなみに真奈美さんは、携帯電話を触りながら一人キッチンでお酒を飲んでいた。
気を使ってくれているのか、私達のテーブル席には座らない。

そんな静かな店内で、誠也さんは私に問いかける。

「そういや空ちゃん。今日はなんの日か知ってる?どうしてこのお店で真奈美の料理を食べているか、知っている?」

「今日ですか?」

考えたこともなかった。
でも私は今日『十二月二十五日』が何の日かすぐに思い出す。

「クリスマス・・・・・です」

「そう。クリスマス。だからと言って、何か特別なことがあるわけじゃないんだけどね。ただ言ってみただけ」

そう言った誠也さんはウーロン茶を一口口に運ぶ。

私も釣られるように、パインジュースを一口。

・・・・・・・。

クリスマスか・・・・・。

ってか、だったらなんで誠也さんはここにいるんだろう。
なんで私と一緒にクリスマスを過ごしているんだろう。

私、来年の新学期に松井先生に殺されないだろうか?

「そ、そういえば誠也さん、松井先生とはどうなったのですか?ま、まだつ、合っているんじゃ」

声を震わせながら、松井先生に恐れながら、私は問いかける。

でも誠也さんから帰ってきたのは、意外な言葉。

「ん?別れたよ。裕香が『誠也は空ちゃんの方がお似合いだから』って」

別れたって、何にも名残惜しそうに答えてないけど・・・・・。

「い、いいんですか?」

誠也さんは苦笑い。

「さあね。あんまり考えたことなかったな。みんな、それどころじゃなかったし」

それどころじゃなかった。

・・・・・・・。