「どうしたの？やっぱりこう言うの苦手？」

誠也さんに『気を遣われている』と思ったから、私は首を横に振って否定する。

「あ、いや、そんなことないです」

そういって、私は目の前の料理を口に運んだ。

心配されるのは、もう嫌なのに。

・・・・・・。

「最近の空ちゃん、すっごく頑張ってるね？それにすっごく明るくなったよ」

「そう・・・ですか？」

「うん。なんだか元気な武瑠くんを思い出すよ。やっぱり二人は似ているなって」

「そうかな・・・？」

「だって、将大さんと茉尋さんの子だからね。元気じゃなきゃおかしいよ。むしろ元気が溢れているって言うか」

「はい・・・」

・・・・・・・。

なんでだろう。

千尋さんや真奈美さん、海ちゃんや孝太くんや燐ちゃんや花音ちゃんの前なら笑顔で話せるのに、誠也さんの前じゃうまく話せない。

不思議と昔の自分に戻ってしまう。

暗い美柳空に戻ってしまう。

・・・・・。

ねえ、なんで？

どうして？

どうして誠也さんの前じゃ、笑えないの？

どうして誠也さんの前じゃ、暗くなっちゃうの？

私、誠也さんのことが大好きなのに。

誠也さんと会えるこの日をすごく楽しみにしていたのに。

私、もっと笑いたいのに・・・・・・。

・・・・・・・。

笑えないよ。

なんで？

なんで笑えないの？

どうしていつもの私に戻っちゃうの？

・・・・・・・。

わからない。

本当にわからない・・・・・・。

目の前の料理を食べ終えると、次々に美味しそうな別の料理が出て来る。
イタリアンのお店らしく、パスタやピザにメインの魚料理やお肉料理。

どれも本当に美味しく、食べたことの無い料理に、新しい発見がいっぱい。

誠也さんとの会話も、進んでいく。

・・・・・・・。

でも、心が晴れないのはどうしてだろう？

どうして胸が苦しいのだろう。

さっきまでずっと笑顔で千尋さんと踊りの練習をしていたって言うのに。

ずっと笑っていたのに・・・・・。

・・・・・・・。

まあでも、考えても仕方がない。
わからないなら考えても仕方ない。

教えてくれる人もいなさそうだし・・・・。