午後十時五分。

誠也さんの車に揺られてやってきたのは、私が一度訪れたことのある場所だった。
『イタリアンレストランBuono』という、美味しい料理が自慢のオシャレなレストラン。

店の外にはイタリアの国旗が掲げられて、イタリアンのお店とすぐにわかる。

そしてここは誠也さんの家族が経営しているお店だ。
お店に入ると、早速店長である真奈美さんが私を出迎えてくれる。

もちろん不気味な笑みを見せて・・・・・。

「いらっしゃいませ!このクッソ忙しいクリスマス当日に遅刻なんて営業妨害同然だから、空ちゃんだけ料金三倍ね」

「うう・・・・。って、なんで私だけなんですか?」

この人はいつも私の敵だ。

まあ、今回は私が悪いんだけど・・・。
元々私は誠也さんと一緒に今日このお店に来る予定だった。
席も予約もして、ここで誠也さんと一緒に夜ごはんを食べる予定だった。

確か予約の時間は午後の七時半だっけ。

・・・・・・。

私、誠也さんや真奈美さんとの約束を完全に忘れて、ずっと千尋さんと練習していたんだ・・・・。
夢中になりすぎて、時計を見たらいつの間にか夜の九時を回っていたし。

それに今日の待ち合わせ相手であった誠也さんが遅刻して、千尋さんと一緒に誠也さんの悪口を言っていたけど、全部自分に返ってきた。

結局私も遅刻してしまったし・・・・・。

それにみんなに迷惑かけちゃったし・・・・・。
後から携帯電話を見たら、鬼のように色んな人から電話が鳴り続けて、携帯電話の電池が切れていたし・・・・・・。

本当にごめんなさい。
そんな申し訳ない気持ちと戦っている最中に、近くの席から声が聞こえてきた。

それは大好きな私の友達の声。