でも、その曲を聴いて私は改めて思い出した。
亡くなった私の家族のために、『美柳空は頑張る』って心の中で誓ったことを。

まだ誰かに支えられなきゃ生きていけないけど、いつかは一人で胸張って生きていくことを。

だからこれは『神様から与えられた試練』だと、私は置き換えた。
大きな山場だと思うようにした。

そして目の前の大きな山を登り終えたら、山頂から見える景色はどんな風になっているんだろうって。

これからの私には、どんな『未来』が待っているんだろうって。
何事も前向きに。前を向いて生きて生きていかないと、人生なんて楽しめないし。

きっとお母さんもそう思って生きてきたんだろう。
じゃないとお母さん、こんな凄い曲を作れない。

『お母さんも辛い人生を歩んできた』って、さっき千尋さんが教えてくれたし。
お母さんも負けずに生きてきたって言うし。

・・・・・・・・。

だったら、私も頑張らないと！

もう自分に負けていられない！

そんなことを思いながら、私はお母さんの曲である『青空』を耳で感じた。
そして目の前で華麗な踊りを見せてくれる千尋さんの動きを目に焼き付けた。

曲に合わせて左右に動いたり、くるりと回ったり。
右手を上げたり、左足を上げたり。

途中でジャンプしたり、笑顔を見せたり、手を振ったり・・・・・・。

「すごい・・・」

思わずそう呟くほど、千尋さんの動きは綺麗だった。
うまく伝わらないと思うけど、『魅せる才能』とはこう言うことを言うのだろうか？

不思議と私も体を動かしてみたくなった。

と言うかもう勝手に手だけ動いて、少しだけ千尋さんの動きを真似しているし・・・・・。
今の私、まるで親の動きを真似する赤ちゃんみたい。

そして千尋さんは曲の半分くらいのところで、千尋さんは一度音楽を止めた。

同時に自分の動きも止まると、私に問いかける。

「まあこんなところかな。いける？」

「が、頑張ります！」

正直言って、すごく難しいだろう。
ダンスを経験したことない私だから尚更。

でも『すごく楽しそう』だと、私は感じた。
ダンスを経験したことがない私だから尚更・・・・・。

早速私も千尋さんの隣に立ち、目の前の鏡に映る自分を見つめる。

本来は動きやすい服装でやるのが一番だけど、千尋さんの『めんどくさい』と言う一言で、私は今日ずっと着ている私服姿だ。
千尋さんに選んで貰ったベージュのサロペットスカートに白のセーター。

それと今までの私とは思えないメイクに、セットしてもらった髪型。
本当に別の可愛い女の子に魂を乗っ取っちゃったみたいだ。

『自分が自分じゃない』って、今日は鏡を見て何度も呟いているし。
そんな私を見た千尋さんは、もう一度音楽を鳴らし始める。

「それじゃあ千尋の動きを真似て、空もやってみてね。リズムを取りながら千尋の真似してみる」

「はい！」