「意味わかんないです。ひゃあ!」

千尋さんの言葉を否定した直後、後ろから私の胸を鷲掴みにされた。

って、え・・・・?

「ち、千尋さん!何するのですか!痴漢です!犯罪です!」

千尋さんの手は止まらない。

「いいじゃん女同士なんだし。スタジオには千尋と空だけなんだし」

まあ確かにこの広い『ダンススタジオ』と言う空間には、私と千尋さんの二人だけ。
ここの大家さんとか管理人さんは見当たらない。

ってそんなことはどうでもいい!

「良くないです!嫌です!」

「でもここの管理人も女好きだからねー。ここで練習していたら、いずれ空ちゃんも管理人に襲われるよ。ダンスがすごく上手な美女管理人さんにね。ダンススクールの先生なんだ」

ここにきてからの千尋さん、なんだかおかしい。
すごく変。

『変な人』っていうのは知っているけど、それ以上に『変』だ。
まるで女子の胸を狙う、未知のウイルスに感染したかのように・・・・・。

ってか千尋さん、いい加減にしてください!

「もう千尋さん!私、千尋さんに胸を揉まれるためにここに来たんじゃありません!振り付けを教えてくれるんじゃなかったのですか?」

今の私、何も間違ったことは言っていない。
逆に間違っているなら教えて欲しい。

なのに、この人はどこまでもおかしい。
なぜだか首をかしげる千尋さん。

「え?そうなの?」

決めた。
帰ろう。

「私、帰ります。千尋さんと活動もしません」

私がそう言えば、流石に『変態千尋さん』でも手を離してくれると思った。

『ごめんごめん』って、苦笑いを浮かべて謝ってくるのだと思ったのに・・・・・。

・・・・。

「もう、空は強がっちゃって!本当に可愛いな」

そう言って頭のおかしな千尋さんは謝るどころか、私が大嫌いなくすぐり攻撃を仕掛けて来た。

本当に本当に、この人頭がおかしい。

「きゃははは!千尋さん!やめてください」

「嫌だよーだ。こうやって、千尋がお姉ちゃんにされたこと、全部やり返してやるんだから」

「やり返すって、意味わかっているんですか?相手を間違っていますって!お母さんにやり返してください!」

「って言われもお姉ちゃんはもう居ないし。ってか顔が似ているだけで、『空に復讐する動機』にはなると思うとけどな。違う?」

「違います!きゃはは!」

またくすぐりをしてきた。本当に調子に乗りやがって。
『私より早く生まれたから』って調子に乗りやがって。

私も千尋さん相手ならやり返したいけど、思った以上に千尋さんの力が強くて逃げられない。
この人、ずっと私の体を触ってくるから私も離れられないし・・・。

・・・・・・。

もう!