午後二時三十五分。

急いでお昼ゴハンを食べて向かった先は、この街にあるダンススクールだった。
今お昼ゴハンを食べた場所からかなり近い。

そのダンススクールは千尋さんが言う、『練習』には最適と思われる場所だ。
フローリングの床に、大きな鏡のある部屋。

これを『ダンススタジオ』とても言うのだろうか。
よくわからないけど。

そんなダンススタジオを借りることになった私と千尋さんは、早速行動に移った。
準備運動をして体をほぐしていく。

まあ、何もかも経験がない私には、準備運動すら何をしたらいいのかわからないけど・・・・・。

と言うか今の私、わからない事だらけだ。
見慣れない場所で、ただただ周囲を見渡し続ける私。

落ち着きもない。
なんだか知らない国に来てしまった気分・・・・・・。
一方の千尋さんは私に笑顔を見せる。

「さてと、じゃあやってみようか」

『やってみようか』と言われても、私は何をやったらいいのでしょう。
なんて言えたらいいけど、不思議と緊張しているから上手く言葉が出てこない・・・・。

「えっと、私・・・・・」

直後、千尋さんは私を睨みつけて怒ってきた。

「もう!まさか踊れないって言うの?」

千尋さん、何を意味のわからないことを言っているのだろう。

「踊れないってどういう事ですか?私」

『そもそも踊った事ないです』そう言おうと思ったのに・・・・・。

千尋さん、やっぱり性格が悪い。
私の言葉を上書きして、意味のわからないことを言ってくる。

「あのmahiroさんの妹である『チロル様』と一緒に踊れるって言うのに、まさか自習もしてないの?呆れた子ねえ。チロル様が考えた『青空』の振り付けくらい知っているでしょうが!」

『高校生なら足し算や引き算ができて当たり前』みたいな言い方で言うのはやめてください。
ってか『一緒に活動をしよう』と言われたのって、ついさっきの出来事だし。

それに私、千尋さんがチロルって知らなかったし。
それもさっき知ったのに。

チロルの動画を見る時間すらないのに・・・・・。

・・・・・・・。

ってか千尋さん、行動力凄すぎないかな?

さっき『千尋と一緒に仕事をしましょう』って言ったばっかなのに、私との撮影を一本撮り終えて、もう私と一緒に踊ろうとするし。
たった六時間しか経過してないのに、どうしてそこまで動けるのだろう。

どうして行動できるのだろう。

やっぱり、私と一緒に活動できるから嬉しいのかな?
『私と活動するのが千尋さんの夢』だといっていたし。

人って『夢』のためなら、すぐに行動できるのだろうか。


まあ、今はそこは考えても仕方がない。

とりあえず、目の前の『理不尽な上司』をなんとかしないと・・。