「でも安心して。これからは空は、千尋が守るから。あたしと一緒に頑張る『パートナー』なんだもん。だからもし辛いことがあったら、なんでも相談してほしいな。小さなことでも大きなことでも、疑問に感じたら話してほしいな。もし嫌な事があったら、すぐに相談してほしいし。知らず知らずの間に、千尋が空を傷つけているかもしれないし。何より千尋、大切な人が苦しんでいるところを見たくないの。『自分の存在が大切な誰かを誰を傷つけている』って思ったら、千尋も苦しいし」

その千尋さんの言葉を聞いて、社会人の口からよく聞く『上司』という言葉が脳裏に浮かんだ。
理由は、なんとなく・・・・・。

でもこれからは千尋さんが私の『上司』になるのだろうと、ふとそんなことを思った。

誠也さんから見た、私のお父さんやおばあちゃんのような存在。
生きていく上で、とても大きな存在。

そしてそれが『これからすっごく楽しみ』だと思う私がここにいる。
私が大好きな千尋さんと一緒に仕事が出来るって思ったら『早く明日が来ないかな?』って思う美柳空がここにいる。

だけど、突然千尋さんは頬を膨らませて、自分の今の発言を訂正する。

「まあアンチは別だけどね。それだけは知らない。なんかチロルのアンチ、結構いるみたいだし」

アンチといえばチロルの活動を否定する人達のことだ。
もしくはチロルの存在を嫌うもの。

・・・・・なんか意外だ。

「え?そうなんですか?」

千尋さんはさらに頬を膨らませた。

「だってあの『mahiro』の楽曲に振り付けをして踊っているんだよ。当時は『国内最高の音楽クリエーター』と呼ばれていたお姉ちゃんだから、ファンもすごく多かったと同時にアンチも多かったし。曲に『賛否両論』があったみたい。それでその影響でお姉ちゃんのアンチが妹の千尋のところまで来ているし。『調子に乗んな』とか、『踊りがヘタクソ』とか動画やネットにコメント書かれたりするし」

急に胸が痛くなってきた・・・・・。
私、頑張れるだろうか・・・?

「私も、色々言われたりするのですかね・・・・・」

「まあ言われるだろうね。この業界には付き物。正直言って、それは絶対に避けられない」

「うう・・・・」

肩を落とす私。
正直言って聞きたくなかった情報だ。

私、メンタルは強いほうじゃないし。
辛いことはもう経験したくしないし・・。

でも千尋さんとなら私、頑張れる気がする。

どんな状況でも笑顔見せてくれる千尋さんが、これからずっと側にいる。