「お父さんとお母さん、どうやって知り合ったんですか?」

その私の言葉に、千尋さんは答える。
「将大さんがお姉ちゃんを海で『ナンパ』したんだって。確かお姉ちゃんが中学三年の十五歳の時かな」

確かお父さんとお母さんって、結構歳が離れていたような・・・。

って、あれ?

「それって犯罪じゃ・・・・」

千尋さんは苦笑い。

「まあよくよく考えてみると確かに・・・・・。将大さん、当時は二十六歳だったし」

そう言った千尋さんは言葉を続ける。
妹だから知る、私のお母さんまだ知らない所を語ってくれる。

「お姉ちゃん、両親のことが大嫌いだったんだ。両親と意見が合わなくて、昔はよく家出をしていたし。お姉ちゃん、本当に両親のことが嫌いだし」

「なんで両親が嫌いだったんですか?」

「お姉ちゃん、中学一年生の時から不登校になってしまったんだ。理由は『学校が嫌い』とか『いじめられた』とか、そう言うのじゃなくて、ずっと家でパソコンを触って音楽を作っていたから。小学生の時から音楽を作っていたし。数学や国語の授業よりも音楽活動に力を入れちゃったみたい。音楽を作ることがすごく好きみたい」

「すごい・・・」

私がそう言った直後、千尋さんの表情が曇った。
まるでそこに、とてつもない大きな闇があるかのように・・・・。

「でもね、それを千尋達の『両親』は許してくれなかったんだ。両親は頭のおかしい人だから、お姉ちゃんが大切にしている機材全部壊して捨てちゃった。お姉ちゃんすっごく怒っていたっけ」

機材を全部壊した?
そこまでする必要がある?

って私は思ってけど・・・・・。

「まあでも、両親もそう思ってもおかしくないよね。自分の娘が『人間関係』や『授業が嫌』で引きこもっているんじゃなくて、完全な『趣味』で家に引きこもっているわけだし。まだ中学生一年生だったし、せめて学校には行って欲しいよね」

千尋さんが言う親の気持ちを考えたら、私は納得するしかなかった。
確かに、それはあんまり良くないと私も思うし。

「そうですね・・・・・」

ふとその時、私が好きな小説の話を思い出した。
水族館で誠也さんに話した、ロボットと小さな女の子のお話。

・・・・・・・。

研究所に引きこもるロボット開発が好きな小学生の女の子。
毎日自分が開発したロボットと遊び、彼女は学校には行っていない。

そんな娘の将来を心配した女の子のお母さんは、女の子の体に病があると嘘をつき、ロボットも壊れるように細工した。

すべては引きこもりの娘を学校に行かせるため。
少しでも外の世界を見てもらうと言うお話。

ある意味親と子の戦いのお話。
まるで、千尋さんが話してくれた私のお母さんとその両親のようなお話。

・・・・・まあ、小説の物語の結末は全然違うんだけどね。

千尋さんはさらに語ってくれる。