午後一時四十九分。

私と千尋さんがやってきたのは、『白町カフェ』と言う私の住む街にあるレストランカフェ。

初めてきたお店だけど、千尋さん曰く料理がすごく美味しいお店らしい。

木造のカジュアルな店内で、キッチンにいる人は見えないけど、店内にいる従業員は二人。
とても綺麗な金髪の女性従業員と、綺麗な黒髪の女性従業員。

それとキッチンには茶髪の髪が特徴的な私と同じ年代の女の子の従業員。
なんだか忙しそう。

ってか黒髪の人と茶髪の人、姉妹かな?すごく似ている。

でも店内にはお客さんはあまり居ない。
ラストオーダーの時間である午後二時が近いからだろうか。

それとも今日はどの飲食店も何かあるのだろうか。
見えないキッチンの中からは、すごく忙しいのかバタバタと料理をする音が聞こえる。

そんな店内の違和感に気づきながら、私はこのお店の名物料理でもあるサンドイッチランチを注文。
千尋さんも同じものを注文。

そしてあとは料理を待つだけの状態で、先に口を開いたのは千尋さんだった。
先ほどの撮影を振り返る千尋さん。

「お疲れ様、空。撮影どうだった?楽しかった?」

楽しかったといえば、楽しかった。
だけど課題は山積み。

と言うか緊張し過ぎて、私自身全然覚えてない。
まるで撮影時の記憶がごっそり抜けてしまったみたい。

「はい!でもうまく話せなかったって言うか。結構噛んでしまったって言うか」

私の言葉に千尋さんは笑ってくれる。

「あはは。でも仕方ないよ。と言うか、『初めて』にしてはうまく話せた方だと思うけどな。緊張さはすごく伝わってきたけど、慣れたらどうにかなるし」

「そうだといいです」

千尋さんの話を聞くと、今日の撮影した映像を投稿するのは年が明けてからみたいだ。
『編集』という私が聞きなれない言葉のせいでかなり時間がかかるらしい。

あと『他の撮影も年内に撮りたい』って言っていた。
私、早速千尋さんと一緒に踊ったりするのだろうか。

・・・・・・・。

でもそんなことより気になる事がある。
正直言って、私が一つ凄く心配している事がある。

それは、私が千尋さんと一緒にこのお店にいる事。

「と言うか、いいのですか?」

私の言葉に、察しの良い千尋さんは頬を膨らませて答える。

「遅刻する奴が悪い。空を待たせるなんて許さないし。まあ千尋もせっかく『地元』に帰ってこれたんだし。千尋も空と話がしたかったし」

そう言ってくれるとすごく嬉しいです。
でも私の心は曇ったままっていうか・・・・。

『相手は悲しんでいないのだろうか?』って思ってしまう私だし。

まあでも、確かに遅刻してくる奴が悪い。
私を待たせるなんて、許さないし・・・・・。

なんてね。

でも確かに私ももっと千尋さんと話したかった。
中でも一番、私の両親のことについて知りたかった。

特に私の『お母さん』のこと。