「はい！オッケーです！」

千尋さんのその一言で、撮影が終わった。
カメラマンの真奈美さんも構えていたカメラを下ろす。

そんな中、私は大きな息を吐いた。

まず『疲れた』と言うのが本音だ。
私が映るシーンは全体でも少しだけだけど、その少しの撮影のためだけにかなり労力を使った。

何もかも初めての経験に、私の頭の中は常に真っ白。

本当に疲れた。

・・・・・・。

私は千尋さんが用意してくれた台本どおりのセリフで、撮影を乗り切った。
言葉に詰まったけど、千尋さんのフォローのおかげで何とか無事に終わった。

私のせいで撮り直しにもなったけど、みんな怒らずに優しく見守ってくれた。
嫌な顔を見せずに、私に付き合ってくれる。

本当にみんな優しすぎる。

時刻はいつの間にか午後十二時を回っていた。
今回の撮影はこれで終わり。

同時に私の服装も変わっていた。
白のブラウスに青いフレアスカートがいつもの私の私服なのに、今は違う。

今回の撮影で千尋さんが選んでくれた、可愛く大人っぽい服装。
明るいベージュのサロペットスカートに白のセーターと言った、今までの私には全く馴染みのない新しい服装。

それと来る前に千尋さんにメイクをしてもらって、真奈美さんに髪をセットしてもらったから、鏡で映る自分は本当に自分じゃないみたいだ。

本当に雑誌に出そうな可愛い女の子に私が乗り移っちゃったみたい。
思わず『誰？』って言ってしまいそう。

そんな私と千尋さんと真奈美さんは、撮影に協力してもらった服屋さんにお礼の言葉と共にこの場を後にした。
また真奈美さんの車で、私達は一度私の家に帰る。

家に帰ってきた私の姿に、おばあちゃんも嬉しそうだ。
『昔の茉尋を思い出す』っておばあちゃんは言っていた。

なんかそう言われて、私も嬉しい。