「まあとにかく、今日は『撮影』って言ってもあたしが勝手に進行して服を選ぶだけだからね。空ちゃんには最初の自己紹介をしてもらうだけだし」

自己紹介。

その言葉に息を飲んだ私だけど、突然私の鞄に入っている携帯電話が鳴った。
電話ではなくメールの着信音。

一応相手を確認してみたら、差出人は千尋さんだった。
内容は、千尋さんが考えてくれた、長いような短いような私が語る自己紹介文。


クリエーターになろうとする私の第一歩のたくさんの人のメッセージ。

・・・・・・・。

「sola・・・・ですか?」
私の言葉に千尋さんは反応する。

「一応色々と考えたんだよ?『空豆』とか、『そらまる』とか覚えてもらいやすい名前。千尋の『チロル』の様な名前」

私が気になった『sola』は、私がクリエーター活動する上での名前らしい。
これも千尋さんが考えてくれたみたいだ。

千尋さんは続ける。

「でも空は空だ。茉尋お姉ちゃんも『mahiro』で生きてきたし、それどもいいかなってさ。だから空も『sola』で行こうかなって。それとも、名前は自分で考えたい?」

『sola』は本名だけど、名前をローマ字にしただけ。
一見名前の響きは無さそうだけど、お母さんと一緒ならそれがいいや。

私もずっと音楽クリエーター『mahiro』に憧れていたし。

いつかお母さんみたいになりたいし。

「いえ。『sola』がいいです」

「じゃあ決まりだね!」

そう言った千尋さんは、自身の腕につけている腕時計で時間を確認。

時刻はちょうど午前十時になったところ。

・・・・・・・・。

どうやら始まるみたい。

「それじゃあ早速始めようかな!真奈美さん、よろしくお願いします!」

「お願いします!任せてくださいチロルさん!空ちゃんもファイト!」

「はい!よろしくお願いします!」