十二月二十五日、午前九時四十五分。

真奈美さんが運転する車に揺られてやって来たのは、私が住む街から少し離れたショッピングモールだった。
老若男女問わずに人気の場所で、とても大きな店内にはたくさんのお店が揃っている。

営業時間は朝の九時と、まだショッピングモールがオープンして間もないのに、中には人が沢山いる。

そんなショッピングモールの中で私達が最初に向かったのは、ショッピングモール内でも人気のある服屋さんだった。
カジュアルな服が揃う、中高生に人気のあるお店。

「と言うわけで、まずは空に合った服探しなんだけど・・・・・」

そう言った千尋さんは私を見て苦笑い。
理由は、私が真奈美さんを睨みつけているから。

「なんですか?これ?」

決して真奈美さんが、いつものように私を攻撃しているからとかじゃない。
真奈美さんはまるで子供のように、今から始まる出来事に胸を膨らませているだけ。

本当に真奈美さん特に何もしていない。

だけど、私にはどうして真奈美さんが『ビデオカメラ』を片手に持っているのか意味がわからない。
なんか私を写そうとしているし、なんだか怪しいカメラマンみたいだし。

そんな真奈美さんの現状を、千尋さんは説明してくれる。

「動画撮影だよ。『空と一緒に活動できたなー』って千尋は思っているし。と言うか、『空と一緒に活動する』って言うのがあたしの夢だし」

活動?
なんの?

「意味わかんないです。ってか『活動』ってなんですか?」

千尋さんは笑顔で答える。

「それはもちろん、『クリエーターとしての活動』だよ!千尋、こう見えて結構有名な人だし」

有名な人。
そう言われて私は少し納得した。

理由は、私達以外にも人がいるこの服屋さんの店内の状況。
その私達以外の人から、何故だかすごく視線を感じると思ったから。

私と同い年と思われる女の子を中心とした視線が多い。

ってかクリエーターとしての仕事?

「意味わかりません・・・・・・」

「踊り手チロル。きいたことない?」

そう言えばこの前その人の話をしていたような・・・・・。

それに私、その人見たことあるし。

「あります」

「それ千尋なんだ。曲に振り付けを自分で考えて、自分で踊る。そしてそれを自分で動画にして、自分で投稿する。たくさんの人に見てもらう。それがあたし、宝千尋こと踊り手チロルの仕事。世界中のみんなに認めてもらうことがあたしの仕事」

前にゲームセンターで見た人。
それとその日の夜に真奈美さんと一緒に見た動画で踊っている人がチロルこと千尋さん。

・・・・・・・・え、そうなの?

「そんな夢を与えるような仕事を、空と一緒にやるのが千尋の夢なんだ。今ではたった一人となってしまった千尋の家族である空と一緒に叶えたい夢」

空と一緒に仕事。

それってつまり・・・・・。

「私も、千尋さんと一緒に踊るのですか?」

本当に千尋さんは『謙虚』な人だといつも私は思う。
申し訳なさそうな表情で千尋さんは小さく頷く。