「うーん。じゃあ買いにいく?まだ待ち合わせには時間あるらしいし」

その言葉に真奈美さんはすぐに反応する。
「買いに行くって『服』をですよね?だとしたら賛成!」

真奈美さんはそう言って笑顔を見せているけど、私は反対だ。
バイトはしてないから、私のおサイフは今すっからかんなんだし。

「でも私、お金ないですよ?」

と言うか私、お小遣いと言うお小遣いなんてないに等しいし。
毎年貰えるお年玉だけで、一年間を遣り繰りしているし。
もらえる額も凄く少ないのに・・・・・。

・・・・・・。

千尋さんはまた意味の分からない事を言ってくる。

「大丈夫!任せて。もうめんどくさいから経費で落としちゃうから」

「経費?ってことは千尋さん、ついに空ちゃんも?」

経費ってなんだ?

「そう。まずは軽く自己紹介も兼ねてね!企画も考えてあるし。まあでも、詳しいことは後でのお楽しみかな?」

自己紹介?
千尋さん、一体何を語っているんだろう?

本当に何を言っているんだろう。

「じゃあ早速行こうか!早くしないと、撮影時間なくなっちゃうよ?」

千尋さんの言う『撮影時間』という言葉も全く理解できないし。

「賛成!ってな訳で空ちゃんも早く来る!」

「えっ?ってかどこにですか?痛っ!」

真奈美さんに耳を噛まれた。
不意打ちは本当にびっくりうんざりするので、やめて下さい。

あと耳を噛むなんてめちゃくちゃ痛いですし、非常識な行為だと思いますし・・・・・。

って言うか、『美柳空と言う名のハムスターの飼い主さん』なら、もっと大事に扱って下さい。
いや、『私はハムスター』って言うわけじゃないんだけど・・・・。

でも『もっと大事にして欲しい』って言うか、なんて言うか・・・・・。

・・・・・・・・。

とにかく、私の知らないところで勝手な行動はやめて下さい。

『サプライズ』とか、どんな顔したらいいのかわからないですし。

本当にそう言うの苦手なんで。

私、逆に困ります・・・。

こうして、私は二人に連れられて家を後にした。
終始千尋さんの言葉を絵理解できないまま、『十二月二十五日』のとある冬の一日が始まる。

私の人生が大きく変わる一日が始まる・・・・・。