「相変わらず「お洒落不細工』だよね空ちゃんは。こんなんじゃお兄に嫌われちゃうよ」

まるで今の私の心境を読んでいたかのように、真奈美さんは私の髪を触ってくれる。
丁寧に髪をセットしてくれる。

「そうそう。誠也は可愛い系の女の子が好きだからね。だから千尋がよく茉尋お姉ちゃんに教えてもらったメイクを、特別に教えてあげる。茉尋お姉ちゃん、可愛い系のメイク得意だったし。間違いなく今の空にぴったり!」

そして千尋さんはそう言って、自分のリュックサックから自身のメイク道具を取り出した。
見たことのないメイク道具達に、私は一瞬で混乱。

慣れない化粧道具をまるで魔法使いの杖のように扱い、どんどん私の姿が変わっていく。

ってか、『ちーく』や『あいしゃどう』って慣れない横文字を使う千尋さんだけど、それってなんですか?
それ、知ってないと一人の女子高校生として笑われますか?

後でこっそり調べておこう・・・・・。

二人がここに来てくれた理由。
それは、今から誠也さんと二人で出掛ける私の背中を押すため。

私が『おしゃれ不細工』だから、見かねて助けてに来てくれたのだろう。

誠也さんに気に入ってもらえるように、みんな協力してくれる。
私の恋をみんな応援してくれる。

・・・・・・。

「出来た!千尋さんも終わりそうですか?」

「うん!ばっちしかな。見間違えたようになったし」

「流石美容にも定評ある有名クリエーターですね。実は踊ってみた動画より、メイク動画の方が再生数すごいんですよね?」

「ま、まあね。でもダンスの方が本職なんだし。お姉ちゃんが作ってくれた音楽に合わせて踊るのが好きなのに」

「でも売れたらいいじゃないですか。他の人と比べたら幸せなんですから」

「それは確かにそうだね」

難しい二人の会話を聞きながら、私は大人しく目の前に用意された鏡を見ていた。
まるで『魔法』をかけてもらったかのような自分の姿に、驚いてばっかり。

鏡に映る私は、雑誌に出ているような可愛らしい女の子へと変身していた。
本当にモデルのような、元気いっぱいの明るい女の子みたい。

ってか自分で『可愛らしい女の子』って言うのは変だと思うけど、本当に可愛い。
自分が自分じゃないみたい。

まるで知らない誰かに取り付いてしまったみたいだ。
目の前に写る女の子が美柳空というのに。

でもその驚きは一瞬だけ。
またしても真奈美さんはひどい嫌がらせをしてくる・・・・・。

「ってな訳で、空ちゃんの服を脱がせよう!なんかダサいし」

ダサい?

今日の私の服、一応この前誠也さんと遊園地に行ったときの服装なんだけど。
大人っぽい白のブラウスに青色のフレアスカートは私のお気に入りの服なのに。

ってか私、これしか外出用の服はないのに。

ってか真奈美さん、当たり前のように勝手に服を脱がそうとしないで!
犯罪だよ!

そんな中、千尋さんは提案してくれる。