「だから、今度は千尋が空を支えていかないとね。今後辛い顔を見せたら許さないよ?ドロップキックするよ?」

「ど、どろっぷきっく?」

聞きなれない痛そうな技に、私はまた身震い。

一方の誠也さんは笑う。

「あはは。茉尋さんによくドロップキックされていたって聞くよ?あの人、『プロレス技が得意だった』って将大さんからよく聞くし。千尋も茉尋さんの餌食になっていたんでしょ?」

「うるさいな!だから今度空にドロップキックをしてやろうと思っているのよ!やられたらやり返す。これが宝千尋ちゃんの流儀!」

やられたらやり返す?
この人頭大丈夫かな?

ってか、私は千尋さんになにもしてないよ!

そう思った私は我を忘れて大きな声で反論する。
もうからかわれるのは懲り懲りなんです・・・・。

「嫌です!てかそれ、ただ私をいじめたいだけじゃないですか!絶対に嫌ですからね。千尋さんも、どっちかと言うといじられキャラだと思いますし」

「おっ!珍しく空ちゃんが反撃している」

誠也さんの言う通り、確かに私は千尋さんにやり返している。

・・・・・なんかこれ、楽しいかも。

一方の千尋さんは、私に怒りを表す。

「誰がいじられキャラよ!いや、確かに千尋もお姉ちゃんによく酷いことをされていたし、誠也にも裕香にも酷いことされて来たし。最近は真奈美にも酷い扱いされているし」

真奈美さん?
なにそれ、すっごく気になるのですけど。

「でも空は別!アンタは千尋の『おもちゃ』よ!これからたっぷりいたぶってやるんだから!毎日とことんいじめてやるんだから!」

この千尋さんと言う私の叔母に当たる人は、意地でも私をいじめたいようだ。

でも、そうはさせるか。

「やれるもんならやってみろです。誠也さんは許しても、千尋さんは絶対に許さないですからね!」

「頭に来るな!それ、差別だぞ」

「区別です。きゃあ!」

ベットの上にいる私に飛びつくように攻撃してくる千尋さん。
私が大嫌いなくすぐり攻撃をしてくる。

「もう怒った!コイツ絶対にセメントで固めて海に沈めてやる!」

「ちょ!千尋さん!あははくすぐったいです!」

「絶対に許さないぞ!可愛いからって、なんでも許されるわけじゃないんだぞ!あたしをいじめたら、死刑同様なんだぞ!」

「だって千尋さん、からかったら面白いですし。きゃはは!」

千尋さんのくすぐり攻撃が強くなって、私の声も大きくなる。
でも千尋さんに攻撃が出来たから、くすぐられてもいいかと思う変な自分もいる。

なんて言うか、ちょっと楽しいかも。

そんな中、苦笑いを浮かべる誠也さんの声が聞こえる。

「まあまあ千尋その辺で。一応空ちゃん、病人なんだから優しくね」

誠也さんのフォローに、私も続く。

「そ、そうですよ!ほらこう見えて私、点滴もしていますし。だから『優しくしてほしい』って言うか・・・・・・」

そういえば千尋さんは離れてくれると思った。
もしくは『更に私を痛めつけてくる』のだと思ったけど。

・・・・・・。

千尋さんは突然涙を流す。

私に抱きついて、私への気持ちを語ってくれる。