「ちょっと誠也。深夜に病室に入っていいの？って・・・・・え？」

静かな病室の中に届いた、聞き覚えのある女の人の声。

その声の持ち主は、私と誠也さんがいる病室に入ってくると、ベットの上の私の姿に唖然としていた。

どうして彼女が唖然としているのか鈍感な私には理解は出来ないけど、『空いた口が塞がらない』というのはこういう時に使うのだろうか。

目の前の人、亡くなった私のお母さんにすごく似ている。

というかこの人って、確か秋祭りの時に廃ビルの屋上で・・・・。

「もしかしてはじめましてかな？それともお久しぶりかな？」

その誠也さんの言葉を聞いて、私は念のためにお母さんそっくりの人に問い掛ける。

「えっと、お母さん。じゃないですよね？」

違うなら『違う』と言って欲しかった。
私は目の前の大好きなお母さんにそっくりな人の正体を知りたいだけ。

なのに・・・・・。

「えっ！？・・・・えっ？」

いきなり彼女は私に抱きついて来た。

そして聞こえる、彼女の喜びの声。

「よかった！本当によかった！」

それと小さく笑う誠也さんの声。

「あはは。そういえば千尋に言ってなかったね。空ちゃんが目を覚ましたこと」

千尋？

その名前は聞いたことのある名前だ。
しかもその名前は何度も聞いている。

そんな千尋さんという人に私は言葉を探すけど、人見知りで人との会話の経験が少ない私は言葉が出てこない。

一方で千尋さんは私に怒っている。

「なんで自殺なんかするの！」

「ご、ごめんなさい・・・・・」

あまりにも彼女の視線と言葉が怖かったから、私は急いで謝った。
頭も下げたけど・・・・・。

「痛い！」

直後、びっくりするほど痛い頭突きを千尋さんに食らわされた。

本当に痛い・・・・。

同時に千尋さんは私に説教もしてくる。

「そんなことしたら茉尋姉ちゃんが怒るよ！茉尋姉ちゃんの妹の千尋も怒るよ！」

茉尋姉ちゃんの妹の私。
って事はやっぱり。

・・・・・。

てか首を絞めるのはやめてください・・・・。

息できないです。