「どうして空ちゃんはそんな意地を張るのさ。何が嫌なのさ。なんで空ちゃんは笑えないのさ。この前は出来たじゃんか。この前俺と遊んだ時、ずっと笑っていたじゃんか」

・・・・・・。

「お願いだからもっと素直になってよ・・・・俺、滅茶苦茶苦しいんだよ?」

誠也さんは今、滅茶苦茶苦しい。

・・・・・・。

そうなんだ。知らなかった。

「お父さんが亡くなったから、自分の心の支えがいないってこと?俺が将大さんの代わりじゃダメなの?」

その質問に対して、自分でも答えがよく分からなかったから、私は無言を貫いた。
いや、誠也さんの言う通りなんだけど、うまく言葉が出てこない。

そんな私に、誠也さんは更に質問してくる。
とても暗い誠也さんの声。

「それとも、俺なんかじゃ頼りない?」

「そんなことはないです!」

そう言って否定したのは私。
また無意識の行動だ。

一方の誠也さんは私から離れると、少し驚いた表情を見せた。

多分こんな状況でも、自分の気持ちよりも誰かの気持ちを優先する私に驚いているのだろう。

そんな誠也さんは、再び私に問い掛ける。

「空ちゃんは結局何がしたいの?」

その言葉を聞いて、私は『嫌な話に戻された』と感じたから、適当な言葉で誤魔化そうとする。

「わからないです・・・・・」

と言うか誠也さんも本音を話してくれたように、私も本音を話したらいいだけのに。
どうしてまたくだらない意地を張っちゃうのだろう・・・・・。

やっぱり私、誠也さんの事が嫌いなんだろうか?
嫌いだから話したくないんだろうか。

・・・・・・。

まあ、どっちでもいいっか。

自分の事はもう考えたくない。

「わからない。今後自分がどうしたいかすら、空ちゃん自身は考えれないってこと?」

でも私の考えを見事に誠也さんに言い当てられたから、私は小さく頷く。

そしてその姿に、誠也さんも納得してくれたみたい。

「そう」

直後、誠也さんは小さな息を吐くと、考えるような仕草を見せた。
まるで『空ちゃんはどうやったら心を開いてくれるんだろう』とでも言いそうな、誠也さんの辛そうな表情。

と言うか、誠也さんはなんでここに?
病室の時計、深夜の二時半だし。

そもそもなにしに来たの?なんでこの時間?

誠也さんが私の存在に頭を悩ますように、私も今の誠也さんの存在が理解出来ない。

どうして私の前に現れるの?

ねえ、どうして?