「この世の中には『答え』なんてない。逆に答えがあるのは数字の世界だけだ」

また意味のわからない誠也さんの言葉に、私は更に頭を悩ませる。

そして頭を悩ませるから、誠也さんに言葉を投げ付ける。

「意味がわからないです」

「君が目の前の白色を『青」と言えば青にもなるし、赤と言えば『赤』にもなる。全て自分で決めること。『幸せ』か『不幸せ』かも全て自分で決めること」

「意味がわからないです」

もう説教はいいです。

そう伝えたいのに・・・・。

「じゃあ今は君は幸せかな?」

その深く考えさせられる誠也さんの言葉に、私は首を横に振っていた。

また無意識に・・・・・。

「そう。でも『幸せ』だとは思えない?沢山の人に助けられて、毎日楽しくはない?」

もうやめてください。

「この前の遊園地と水族館の空ちゃん、とても幸せそうだったよ。スッゴく輝いていたよ」

本当にやめてください。

「きっと君は嘘つきだ。『自分の人生はは楽しんではいけない』と勝手に勘違いしているから、不幸せなんだと思っているんじゃないの?」

本当にやめて、誠也さん。

「君は美柳空だ。君の大好きなお父さんとお母さんの元に産まれた、元気な女の子だ。元気な美柳空じゃないなら、きっと天国のお父さんとお母さんは怒っているよ。とても悲しんでいるよ」

・・・・・・。

そんなこと言われても私、何をしたらいいのか分からないよ。

どんな顔して生きていたらいいのか、分からないよ・・・・。

「でも私、うまく笑えないんです。いつも辛さが勝ってしまうんです」

「そう。友達と遊んでも、心は晴れない?」

「わかりません」

「困った子だね。じゃあ空ちゃん、君の好きなことは?例えば趣味とか」

「本を読むくらいです。それ以外は特にないです」

「じゃあ最近本を読んでいる?」

小さく私は首を横に振った。

「なんで読まないの? 」

「わかりません」

その言葉の直後、誠也さんは小さなため息を吐いた。

と言うか、ため息吐くぐらいなら私に構わなければ良いのに。

「そう。まあ、分からないのも一つの答えだからね」

でも誠也さんはとても優しい人。
こんなふざけた私のために、まだまだ知恵を絞ってくれる。

私の味方になろうとしてくれる。