不思議な夢を見た。

それは、私が死んでしまう夢。

ビルの屋上から飛び降りて、死ぬ事に後悔しながらこの世を去る夢・・・。

本音はまだまだ生きたいのに、『どうして私は死んでしまったんだろう』と、心の底から後悔する私・・・・・。

何度も何度も誠也さんやお父さんに、『助けて』と祈る私。

本当に、『自分は馬鹿なんだ』と後悔する私。

・・・・・・。

そんな馬鹿みたいな変な夢。

ここはどこなんだろう。

そんなことが真っ先に頭の中に浮かんだ今の私。

それと何故かスゴく懐かしい香りが私の脳まで届いた。
寝起きで全然現状が全く分からないけど、その懐かしい香りは強く私の印象に残った。

それに何故だか私の手も暖かい。

と言うかこれは、確か誠也さんの香り?

・・・・誠也さん?

「やあ。おはよう空ちゃん」

私の大好きな声に、私は自分自身の現状を思い出した。

ここは病室で自分自身が生きていること。
川に全身を強打して、特に背中が痛いこと。

あと私の目の前に誠也さんがいること。

・・・・って、えっ?

「せ、誠也さん!?」

私の驚いた言葉に誠也さんは優しく微笑む。

同時に意地悪なことを言ってくる。

「どうしたの?そんな挙動不審みたいに周囲を見渡して」

「えっと、私」

『夢を見ていた。友達と仲直りする夢を見た』って言おうかと思ったけど・・・・・。

「夢、じゃないよ。燐ちゃんのことも」

何もかも知る誠也さんはそう答えてくれた。
まるで私の心を覗かれているみたい。

それが私には少し嬉しくて、でも少し驚いて、なんだか不思議な気分だ。
何より『誠也さんが側にいる』って理解したら、どこか嬉しい気持ちにもなる。