「まあでも、次自殺なんてしようとしたらあたし絶対に許さないし。だから」

だから?

だからと言って、私の頬を引っ張るのは違うよ北條さん・・・・。

ホント痛いです・・・・・。

「痛い!ほ、北條さん!」

「あたしもアンタと同じ。生きる事を諦め掛けたことがある。自殺しようと何度も考えたことがある」

「えっ?」

耳を疑った北條さんの言葉。
その続きが気になる私。

そしてその続きを、北條さんはすぐに話してくれた。

ずっと知らなかった、北條さんの心の声が聞こえてくる。

「まず家族が殺された時でしょ?施設で暮らしても、もうそこには大好きな家族はいないし。あと施設内であたしもいじめられているし。さっきもそいつらに酷いことされかけたし。殴られたり水を掛けられたり。ホント、あたしが生きていることを否定されているようなもの」

家族が殺された?

施設?

それに北條さんもいじめられている?

・・・・・・・。


・・・・・待って、意味わかんない。

えっ、本当に待って。

「でもあたしには死ぬ勇気はなかった。『明日を断とう』なんて勇気はあたしにはなかった。だって、死んだら終わりなんだよ。何もかも終わりなんだよ。よく分からないけど、あたしが死んだら『あたしの中で生き続ける家族の存在も忘れてしまいそう』だと思ったし」

そう言って、小さな涙を落とす北條さん。
でもすぐに涙を拭き取るとまた笑ってくれる。

一方の私は混乱したまま。
北條さんの本当の顔に全く付いていけない私。

と言うかなんですか、その北條さんの過去。

私一度も聞いていないんですけど・・・・・。

・・・・・。

まあでもここはあえて適当に答えよう。

今の北條さんの姿、『見習いたい』と思ったし。

「北條さんは強くていいな」

そう言った直後、まるで地雷を踏んだかのように、私は北條さんに睨まれる。
何度も見た、北條さんの怒った顔。

「どこがいいのさ!」

「ごめんなさい!」

「でもありがとう空」

「えっ?」

怒ったりお礼を言ったり、ちょっぴり意味のわからない北條さん。
結局何を伝えたいのだろう。

そんな北條さんは、また私に笑みを見せてくれる。
昔何度も見せてくれた、北條さんの笑顔。