「でも空と離れたくなかった。散々酷いとこをして言える台詞じゃないけど、あたしは空の事が大好きだった。最高の『トモダチ』と出会えたって思った！だから空と縁を切るなんてあたし、出来ないよ。空ともっと仲良くなりたいよ！」

一度も私から目を逸らさずに話してくれる北條さん。
私を見つめる目は本気だ。

こんな北條さん、初めて見たかも。

「それが北條さんの言葉ですか？」

「そう。あんたはどうなのさ？」

「ど、どうって」

今の私が思う北條さんへの気持ち。
かつての『友達』で、現在は『最悪の関係』になってしまった北條燐さんへの印象。

・・・・・・。

言葉にすると難しいな、これ。
なんて伝えようか。

「私は北條さんのこと・・・・」

言葉を整理することなく、私は答えようとした。
私の素直な言葉を北條さんに聞いて欲しいと思った。

なのに・・・・・。
北條さんは突然また私の言葉を上書きして、私の言葉を否定する。

「あっ、やっぱいい。聞きたくない」

聞きたくない？
え、意味わかんないよ・・・・。

「えっ？なんで？北條さんが『どうなの？』って言っていたのに」

「うるさい！喋るな！」

「理不尽だよ・・・・」

私はため息を一つ吐いた。
ちょっと付いていけないかも。

でもそれが『北條燐』と言う私の知っている女の子の姿だ。
心は優しい彼女だけど、心を許した相手にはイタズラや意地悪な事をして距離を縮める女の子。

ちょっと自分勝手な子。
昔の私、よく北條さんにからかわれていたし・・・・・・。

なんだか性悪田中兄妹に似ているな。
ってかみんな、なんで私をからかうんだろう。

そんなことを考えていたら隣からまた北條さんの言葉が聞こえた。

今度は『私自身』について問い掛けてくる。

「ねぇ空、今でも『死にたい』って気持ちはある？」

「そ、それは・・・・その、えっと」

そういえば身体中が痛い。
全身を川に打ち付けて、強打したからだろう。

でも『骨が折れた』とか、そう言うのでは無さそうだ。
ちょっと背中が痛い程度。

何より『生きていること』が不思議だ。
かなりの高さから飛び降りたはずなのに。

普通だったら死んでいるはずなのに・・・。

・・・・・・。

ってかなんで私、生きているんだろう？

なんで私は『家族の元』に行けないんだろう。

なんで死ねないんだろう。

・・・・なんで？

「早く答えて！」

「わ、わからないです」

突然の北條さんの言葉に、反射的に言葉を返す私。
そしていつの間にか私は謝りながら身を縮めていた。

北條さんに殴られると感じたから、ガードをする私。
北條さんの拳、結構痛いし・・・・。

一方で北條さんは何故かホッとしたような表情。
怒っている様子はないし、殴って来る様子もない。

そんな北條さんから聞こえる、『友達』としての声。

「でも分からないってことは『死にたい』とはもう思わないってこと？」

「うう・・・・えっと」

私は考えようとした。反射的に出た私の言葉の意味を考えたけど。

・・・・・・・。

やっぱり『わからない』と言うのが今の私の答えだ。
正直言って、生きていることにホッとしている私もいるし・・・。

そんな私に、北條さんは小さく笑った。
昔よく見た、可愛らしい北條さんの笑顔。