お水を飲んだから、少し自分自身の感覚を取り戻してきた。

そして周囲を見渡せば、ここはどうやら病院の中の一室で、私は一命を取り留めたみたいだ。

外は真っ暗。
今何時なんだろうか?

そうやって『現実』を少しずつ理解する私の目の前には女の子の姿。
まるでテレビや雑誌に出てくるようなモデルのような、綺麗な長い黒髪の可愛らしい女の子の名前は北條燐(ホウジョウ リン)さん。

私の『トモダチ』・・・・だ。

その北條さんに、私は問い掛ける。

「えっと・・・・北條さん?」

『どうしてここに?』と続けてそう聞きたかったのに、北條さんに言葉を上書きされた。

また謝り出す北條さん・・・・。

「ごめんなさい空。あたし、間違ったことをしていた」

「えっ?」

「ごめんなさい、ごめんなさい!」

「北條さん?」

正直言って耳を疑った。
まだ現状に対してちゃんと理解していないと言うのもあるけど、『そもそもなんで北條さんが私に頭を下げているんだろう』って。

北條さんと私、『最悪の関係』だったのに。

「えっとその・・・・」

そうだ私達は元々友達だったのに、最悪の関係になってしまったんだ。
私、何度も北條さんに学校では酷いことをされたっけ。

何度も学校の校門を見たら帰りたいと思っていたっけ・・・・・・。

まあでも、全部私が悪いんだけど・・・・。
だから私は言葉を考える。
頭をフル回転させて、正直苦手な北條さんに対して言葉を探してみる。

けど・・・・。

「黙って!あたしがしゃべるの!」

やっぱり北條さんは北條さん。
そう言って、私の声を受け入れてくれない。

昔からそうだけど、主導権を取られたり自身の話を邪魔されるのが大嫌いな北條さん。

だから脅えた私はすぐに謝る。

「ご、ごめんなさい」

一方で北條さんは少し間を置くと語り出す。

突然、自分自身の悩みを話してくれる。

「『最初から間違っていたんじゃないか?』ってずっと思っていた。『空と友達になったことが、空を苦しませる原因になったんじゃないか?』って。あたし、人を不幸にさせる最悪な人間だから。だから全部あたしのせい。空をこんな風にさせたのは全部あたしのせいだよ」

全部あたしのせい。

・・・・・ホントかな?

「そんなこと、ないです」

私はそう言っただけ。
北條さんと違う意見だったから、彼女の言葉を否定しただけ。

でも・・・・・。

「そんなことある!ってか勝手に喋らないで!」

「ひゃあ!」

黙ってと言うように、北條さんに頭突きされた。
まあ、軽くだから痛くないんだけど。

と言うか病人に攻撃しないで・・・・・。

そしてそんな中でも北條さんは自分自身の想いを続ける。

「だから、『早く空と縁を切ろう』と思っていた。龍と健斗の言う通り、早く縁を切れば空は幸せだったのに」

「龍と健斗?」

聞きなれない名前を口にしたら、北條さんに睨まれた。
なんかさっきからちょっと理不尽・・・・。

でも理不尽だと思っても、今の私には何も出来ない。
強いて言うなら謝るくらい。

「ごめんなさい・・・・」

とりあえず北條さんの話を聞こう。
口出しすると噛み付かれる。
だから私はもう一度北條さんに耳を傾けた。

そして聞こえる、北條燐と言う私の『トモダチ』の声。