不思議な夢を見た。
それは私と海ちゃんと孝太くん、それと北條さんと小坂さんの五人で遊ぶ夢。

まるで『友達』のようにみんな仲良く笑顔で過ごす夢。

そしてそこにいる私はずっと笑っていた。
他のみんなも笑っていた。

ホントに、みんな笑顔。

何より『最悪の関係』になってしまった北條さんや小坂さんとも、普通に仲良く話している私がそこにいた。

まるで昔の自分を見ているみたいだ。
昔の仲の良い私達三人組の中に、海ちゃんと孝太くんも輪に加わったような。

そんな不思議な夢。

眠っている間、何度も何度も繰り返して見る不思議な夢・・・・。
ここはどこなんだろう。

そんなことが真っ先に頭の中に浮かんだ今の私。

それと何故かスゴく懐かしい香りが私の脳まで届いた。
混乱して現状が全く分からないけど、その懐かしい香りは強く私の印象に残った。

それに何故だか私の手も暖かい。

と言うかこれは、確か北條さんの香り?

・・・・北條さん?

「ほーじょう、しゃん?」

「えっ?」

口がパサパサで上手く言葉が出てこないけど、部屋の中にいる北條さんはすぐに反応してくれた。
『ずっと待っていた』とでも言いそうな、部屋から出そうな北條さんの視線。

「空?起きたの?空!」

「えっと・・・・、ほーじょうしゃん?」

私の元まで駆け付けてくる北條さんに、私は再び同じ言葉で問い掛けた。

と言うよりお水が欲しいかも。
上手く喋れない。

そんな私を気にせず、突然北條さんは頭を下げ始めた。

同時になぜだか私に謝っている。

「ってごめんなさい。えっとその。馴れ馴れしくて。だからその」

そう言って突然私に謝る北條さんにふさわしい言葉を探そうとするけど、上手くしゃべれない私。

と言うか、まだ頭の中は混乱中。
何が何だかわからない。

でも私、確か自殺しようとビルから飛び降りたんじゃなかったっけ?
みんなの救いの言葉を蹴って、私は死を選んだはずなのに。

・・・・・・。

なんで私、生ているんだろう。

そんなことを考える私の隣で、北條さんは自分がぶら下げるショルダーバッグからペットボトルのお水を取り出した。
そしてそれを私に渡してくれる。

「とりあえず水を飲みなさい!話はそこから・・・・です」

話はそこから。

そう言われた私は、無理矢理北條さんからお水を受け取った。
そして『早く飲め』と言うな視線が怖かったから、私はすぐに水を飲んだ。

無理をせずに、ゆっくり水を口に運ぶ私・・・・・。

・・・・・。