病院に着いたのは午後の四時半。

あたし達はすぐにエレベーターに乗って、空の病室に向かった。
嬉しいような不安なような、複雑な今のあたしの気持ちで上質の扉を開ける。

そういえば空の顔を見るのはいつ以来だろう。
本当に久しぶりかも。

・・・・・・。

「やあ。また来てくれたんだね」

海が空の病室の扉を開けたら、明るい男性の声が聞こえてきた。
腕にギブスを付けた、爽やかな男性。

ちょっとカッコいいかも。

「こんにちは!って、そう言う誠也さんも退院したくせに」

海の言葉に男の人は笑う。

「あはは・・・・。まあ退院しても暇だからね。仕事はまだ無理そうだし」

そう言った男性は、海からあたしと花音に視線を変えた。
とても優しそうな表情をあたしに見せてくれる。

「んで、そこの二人は『はじめまして』かな?」

そこの二人。
それはあたしと花音だとすぐに理解したから、あたしは慌てて言葉を組み立てる。

けど・・・・。

「えっと・・・・北條燐です。空のその・・・・」

言葉に詰まった。
確かこの人、辛い時の空をずっと支えてくれていた男の人だったような。

だから空をいじめていたあたしが、『空の友達です』なんてふざけた台詞、この人には言えない。
『お前は何様なんだ?』とか、『本当に反省しているのか?』とか言われるかと思うから。

思うから言葉に詰まったのに・・・・・。

・・・・・・・・。

空気を読まないのか、素直で真っ直ぐなのか分からない海の言葉が隣から聞こえてくる。

「友達、なんでしょ?」

友達・・・・、本当にそうかな?
そうあたしは思ったのに・・・。

目の前の男の人はあたしに優し過ぎる。

「そこは頷かないと。空ちゃんまた悲しむよ」

空がまた悲しむか・・・・・。
確かにそれは嫌だな。

でもやっぱり、まだ素直になれないあたしがいる。
そんなあたしがいるから変に謝ってしまう。

ってか、謝る必要なんて全くないのに・・・・。

「ごめんなさい・・・・」

直後、男の人は小さく笑った。
そしてあたしから花音へ視線を移す。

「んでもう一人いるね。はじめまして。俺は田中誠也(タナカ セイヤ)です」

そう自己紹介をしてくれた誠也さんに、花音はいつもの笑みを見せて自分も自己紹介。
ホント、どんな状況でも笑える花音が羨ましい。

羨ましいのだけど・・・・・。