花音を追い掛けていたら、知らない間に大きな建物が集まる場所に来ていた。
スペインをイメージして作られた遊園地だから、あまり見たこのないスペイン風の建物があたし達を囲んでいる。

でもあまり人はいない。
と言うか建物以外は何もないし誰もいない。

そんな中、あたしは逃げる花音を捕まえた。
後ろから花音に抱き付いて、花音の動きを止める。

「返せ!」

でも花音は中々しぶとい。

「嫌だよーだ!ってくすぐったいよ!きゃはは!」

花音が嫌いなくすぐりを攻撃を仕掛けたら、案の定花音は暴れだした。
ちょっと楽しい。

同時に花音からあたしの財布を取り返した。

ってか花音、いきなりどうしたのだろう?

「もう。この泥棒猫が!」

「おっ、『泥棒猫』って響きいいね。もっと言ってよ。かのんが猫大好きだから」

泥棒猫って言われて喜ぶなんて、変わった子だな。

と言うかあたし、犬派だし。
猫はイマイチ苦手。

苦手だから、自分は泥棒猫だと言う花音を挑発してみる。

「ばーか!ばか猫花音め」

「んだと?ばか猫?」

まあでも、財布を取り返せて良かった。
店内にはまだ海と孝太が待っているだろうから早く戻らないと。

・・・・・・・。

戻らないといけないのに、花音はあたしにタックルして押し倒してくる。
アスファルトの地面に叩き付けられた形だから、結構痛い。

「痛っ!ちょ、かのん!」

「えへへ。捕まえた。絶対に離すもんか」

そう言って花音はあたしの上に馬乗りのように乗ってきた。

ホント、何考えているのだろう。

「離してよ!こら花音!」

何とか上体だけでも起き上がらせて、あたしは花音に抵抗する。
でも花音は地面に腰を下ろすあたしに股がったまま。

そして花音はその状態であたしを抱き締めてくれた。

初めて聞く花音の本音も聞こえる・・・・。