あたしの話を、川下と高林は真剣に聞いてくれた。
一度もあたしから目を逸らさず、あたしの二人の友達をいじめた理由を受け入れてくれた。

怒ってはおらず、どちらかと言うと信じられないような、唖然とした二人。

花音はずっとあたしの隣で頭を抱えていた。
『あたしと一緒に過ごした辛い過去』でもあるから、花音はその過去を聞くだけで頭が痛くなるのだろう。

最終的には花音は苦し過ぎて、あたしに抱き付いて泣いていたし・・・。

何より『大好きな友達』がいじめられるなんて、凄く苦しいもんね。
それも二人も・・・・・。

花音が信頼した友達全員・・・・。

まあ、空をいじめていたあたしが言えた台詞じゃないけど。

「これがあたしが空をいじめた理由だよ。って信じてくれるかな？」

あたしの声に高林が反応する。

「お前も大分精神が参っていたんだな。仲直りしようとした空を殴りに行くほど」

その言葉に、あたしは高林から目を逸らした。
多分無意識の行動。

同時に答えるあたし。

「そうだね。あの時が一番しんどかったからね。ずっと花音に励まされたし。むしろ花音に怒られたし。『うみちゃんと争って、何になるのさ？』ってさ」

道場であたしは川下と大喧嘩。
今冷静になって振り返ってみると、本当に『やり過ぎた行動』だとあたしは思う。

気が動転していたとは言え、絶対に許される行為じゃないし。

・・・・・。

関係ない川下まで巻き込んで傷付けて、本当にごめんなさい。
一方の川下は、花音に視線を移して呟く。

「まあ、一番辛かったのは小坂だよね。私も小坂から何度も助けを求められたし」

あたしは小さく頷く。

「だね」

あたしは未だに抱き付いて泣いている花音の背中をさすった。

花音に関しては本当にただの被害者。
何度もあたしと対立していた川下に『助けて欲しい』って連絡を取っていたみたいだし。

花音と川下が連絡を取っていたことは、あたしは知っている。
それと、花音が空のために色々と頑張っていたのは知っている。

あたしと川下の関係を良くしようと、ずっと知恵を絞っていたし。

それに川下を攻撃しようとするあたしをなだめようとしてくれたし。
『うみちゃんに攻撃して何になるの？』って、花音はくどく言っていたし。

確かに『空のため』にって考えたら、何一つ意味はなかったし・・・。

そんなことを思い返していたら、まるで今のあたしの心の中を覗いていたかのような言葉がが聞こえた。

ちょっと答えづらい川下からの質問。