「えっと、・・・うん」

「なぜそれを早くアタシらに相談できんのじゃ?」

おばあちゃんが言う、お父さんと同じ質問に私は戸惑ったが、代わりにお父さんが答えてくれる。

「言えるわけねぇだろ?どうせ空の事だから、家族に迷惑掛けたくないとか、心配されたくないと思っていたんだろ?あと武瑠がいるから、『お姉ちゃんとして頑張らないといけえねぇ』と思っていたんだろ?」

お父さんの視線は、おばあちゃんではなく私だった。
優しい表情で私を包んでくれるお父さん。

そして言葉の出てこない情けない娘を励ますように、私の頭を撫でる。

「ったくよ。言い当てられてだんまりか?コノヤロウ。父親を舐めんじゃねぇぞ。いつもお前の事を考えているだから、お前の考えている事なんてお見通しなんだよ」

そういえばさっき、私と海ちゃんを助けてくれたのもお父さんだっけ。
『娘がまだ家に帰ってないから』って理由で、お店の営業時間中にも関わらず私を探してくれるし。

普通の親ってそんなことは一切しないはずなのに。

ホントに意味分からないよ・・・・・。

・・・・・。

「おっ、また泣きやがった。相変わらず泣き虫な空ちゃんだな」

お父さんに言われて気が付いた。

また私、『お父さんやおばあちゃんの前なのに泣いている』ってことに。
涙なんて見せたくないのに。

ホントに、いつもお父さんとおばあちゃんはズルい・・・・。

「ってなけでババア、明日は空と誠也はデートしに行くから、『空のため』に店を手伝え。まさか『もう寿司は握れねぇ』とか言うんじゃねえよな?」

お父さんの言葉に、おばあちゃんは小さく笑って答える。

「『空のため』なら喜んで握ってやるわ。将大も腕が落ちてないか見てやる」

「上等だクソババア。アンタの時代より売り上げは上がっているんだからよ」

そう言って意地を張るお父さんとおばあちゃん。何だか子供みたい・・・・。

それに『空のため』って・・・・・。
ホント、ズルい言葉だ。