空と友達になって少し日が経ったある日のことだ。

今年の五月のある日。
なんの前触れもなく、いきなりあたしの前に現れた龍と健斗はこんなことを言ってきた。

『最近一緒にいる燐と花音の友達と縁を切れ』ってさ。

最初はなんのことか全くわからなかった。
でもその言葉の意味を考えたら、あたしは恐怖に包まれた。

あたしと仲良くしてくれる『美柳空(ミヤナギ ソラ)』に対して、すごく罪悪感が生まれた。

花音とは幼稚園からの幼馴染み。
未だに人見知りの激しいあたしには、友達と言える友達は空ぐらい。

だから龍と健斗の言葉は、『今すぐ空と縁を切れ』と言う事だと理解した。
と言うか、それしか考えられない。

普通ならあたしはどんな命令でも実行してきた。
『後で二人に酷いことをされる』って思ったら、不思議と体が動いてしまう。

自分と花音の身が無事だったら、平気な顔で悪魔にだってなれる。
嫌われ者にだってなれる。

・・・・・・・・。

でもあたし、彼らのどんな命令でもを聞いてきたけど、それだけは守れなかった。
『絶対に空だけは守りたい』と思った。

だってあたし、空の事が大好きだし。

あたしが声をかけてできた、生まれて初めての『友達』だし。

だからあたし、初めて龍と健斗の命令を無視した。
どうしてもそれだけは実行出来ない。

あたしにとって空は『大切な友達』だからそんなことは出来ない。

・・・・・。

そうしたら突然、夏休みの終わりが近付いたある日に二人に呼び出された。
『一人で川沿いにあるトンネルに来い』って走り書きのメッセージがあたしの部屋に残されていた。

そして無視出来ないあたしは、一人で呼び出された人気のない場所に向かった。
オレンジ色の夕暮れの空の下のトンネルの中・・・。

そこにはもちろん、龍と健斗の姿があった。
不気味な笑みで、何一つ状況を理解出来ないあたしを見ている。

それと見覚えのない男女が数人、あたしを囲んでいた。
怖そうな年上の数人の男女。

龍と健斗を含めて、全部十人。

やがてあたしはこの状況を理解した。
龍と健斗の奴、あたしが空と縁を切らなかったから、その罰としてあたしをここに呼んだんだ。

『今から痛い目に遭わせる』って意味でさ。

コイツら本当に人間なのかな?
と言うか、なんであたしばっか攻撃して来るんだろう。

あたし、嫌なことは『嫌』って言って、家族が殺されても一人で頑張って生きているのに。

なんで嫌な思いばっかしなきゃならないんだろう。
あたし、間違った事をしたのかな?

それとも家族と一緒に殺されなかったから、こんな目に遭っているのだろうか?
まるで、あたしが生きていることを世界中から否定されているかのように・・・・。

・・・・・・・。

もう、考えたくない・・・・。