翌日、あたしは突然二人に部屋に呼び出された。
怒った顔で、あたしを見下ろす龍と健斗・・・・。

そんな二人はあたしを昨日同様に暴行し始めた。
あたしを殴ったり蹴ったり、この前の二人の『優しい笑顔』が鬼のような怖い顔に変わっていた。

悪魔のような二人に変わっていた。
そこにかつての面影はない・・・・。

あたしが殴られた理由は、やっぱり昨日の件だ。
『二人の誘いを断った事』について、二人は怒っていた。

と言うか昨日、暴れまわるあたしを散々ボコボコにして気が済んだと思ったのに・・・・。
龍と健斗はまるで『昨日の続きだ』とでも言うようにあたしの存在を許してくれなかった。

ホント、意味わからないよね。

でも・・・・あたしが悪いのかな?

それからも二人はあたしの姿を見ると、笑顔で殴って来るようになった。

この前までは優しいお兄ちゃんのような存在だったのに。
あたしは毎日のように彼らからいじめられるようになった。

龍と健斗は同じ施設の仲間だから、ほぼ毎日顔を合わせる。
毎日、あたしが嫌がる事をして来る。

家族を失ったあたしには、逃げ場なんてない。
施設内の誰かに相談しようとしても、『親睦会』を提案したり施設の仲間を一番に思う龍と健斗だ。

常にみんなからの評価の高い龍と健斗だから、『燐ちゃん、嘘はよくないよ』って言われるのがいつものオチ。
さっきも言ったけど、二人に殴られた時に出来たアザを見せても『また階段から転んだんでしょ?』って言われるし。

だから誰も二人を疑わない。
施設で暮らすあたしには、『助けて』なんて言える人なんて、この世には存在しない・・・・。

今もそうだけど、当時のあたしには『友達』と言える仲間はいない。
知らない誰かに家族を殺された件、そして今回の龍と健斗の件で『人を信用出来なくなってしまったあたしだ。

友達なんているわけがないし、人と関わりたいと思ったこともない。

でもそんなあたしだけど、唯一この世界で信用できる仲間が一人だけいた。

たった一人の、あたしの『親友』がいた。

それは、小坂花音(コサカ カノン)と言う、いつも笑顔で無邪気な女の子だ。
あたしとは正反対の『優しい心』を持った花音は、あたしの大好きな親友。

そんな花音とは幼稚園からの親友で、いつもあたしの味方になってくれた。
だからずっとずっとあたしの側に居てくれる花音は、何度か龍と健斗と戦ってくれた。

花音、あたしより喧嘩は弱いのに、ずっとあたしを守るために、二人に殴られ続けたし。

何度でも立ち上がって戦ってくれたし。

そして最後はいつも笑って、『ごめんねりんちゃん。かのんは燐を守れたかな?』って言ってくれるし。

あたし、その言葉に何度も励まされたし。

・・・・・。

そんな花音を人質にしてきたことがある。

あと空も人質に・・・・。

本当に、人の心を持たない奴等だと龍と健斗を見ていつも思う。