施設のみんなは、龍や健斗が男の子をいじめているとは思わない。
男の子へのいじめも隠れて行われていたものだから、施設内でいじめが行なわれているとは誰一人と知らない。

そんな状態で、どうしてあたしだけがこのいじめについて知る事が出来たのか。
どうして関わったのか。

それは、龍と健斗から『一緒に男の子をいじめよう』と誘われていたから。

なんの抵抗もなく、『こいつのせいで、俺達のハチが死んだんだ。だから俺は、ハチ同様の苦しさをコイツに教えてやる。燐もハチが死んでショックを受けているのなら、一緒にコイツをいじめようぜ』って、龍は笑顔で言っていたから・・・・。

その時のあたし、なんだか頭をかち割られるような頭痛が襲ったんだった。
凄く気分が悪くなったんだっけ・・・・・。

理由はやっぱり、優しいはずの目の前の二人は、『本当は悪魔のような奴なんだ』と理解したから。
『今まであたしに見せていた笑顔は、全部嘘だったんじゃないか？』って思わされたから。

同時にあたしの中で『人は頼っちゃダメなんだと』そんな言葉が脳裏に浮かんだ。
急に目の前の龍と健斗の存在が怖くなってしまった・・・・・。

だから、あたしは二人の提案を断った。
むしろこんな性格のあたしだから二人が許せなくて、龍と健斗を殴ってしまった。

男の子を助ける事だけを思って、あたしは二人に立ち向かった。
許せない二人に立ち向かってみたけど・・・・。

・・・・・・・。

その日のことは、もう思い出したくない。