中学二年生になった頃だった。

ある日、施設で飼っていた犬が死んだ。

原因は事故死で、施設の児童と一緒に散歩に出掛けている最中に、犬が車に轢かれた。

犬が突然道路に飛び出して、対向車に巻き込まれた。即死だったらしい。

施設のみんな、犬の『ハチ』の事が大好きだったのに・・・・・。

・・・・・。

あたしはその時は中学校の修学旅行中だったから、現場にも施設にも居なかった。

だから修学旅行から帰ってきたらハチが亡くなったこと。
それと龍と健斗が、『ハチと一緒に散歩に出掛けた男の子をいじめている』と言うことに、あたしは驚きを隠せなかった。

・・・・・。
と言うか、意味がわからなかった。
目を疑った。

『夢を見ているの?』かと思った。
修学旅行から帰って来て、『帰る場所を間違えたんじゃないか?』って、最初は思わされた。

だって、当時は大好きだった龍と健斗が、『施設の仲間』をいじめているんだよ。
いつも悲しい顔ばっか見せるあたしのために、知恵を絞ってくれる二人なのに。

あたしを笑顔にさせることばかり考えていた仲間だったのに・・・・・・・。

・・・・・・・。

とにかく、あたしは信じられなかった。

と言うより信じたくなかった。
信じたくはないんだけど・・・・。

現実を受け入れる事しか、あたしには出来なかった。

だって、あたしはその二人の行動がどうしても許せなかったし。
いじめられた男の子、犬が苦手なあたしに『ハチの接し方』を教えてくれた心優しい男の子だし。

密かに仲良くなった、あたしの『友達』だし。

何だか分からないけど、『逃げちゃダメ』だとその時は感じたし。

・・・・・・。