いつも彼女はあたしの側にいる。

まるでその言葉を実現させるように、花音は現れた。
呆れた顔で、龍を睨んでいる。

「全く懲りないね。そんなに燐をいじめて楽しい?」

直後、龍の手が止まった。
想像していなかったのか、一瞬だけ龍も驚く。

「あれ?花音ちゃんも一緒だったのか?だったらみんなで一緒に遊ぼうぜ。何にしても、沢山居た方が楽しいだろ?」

花音の表情は変わらない。

「燐から離れて」

「嫌だ、無理」

即答で返す龍。
同時に龍はあたしへ視線を移す。

そして龍はあたしへの不満を口にする。

「つか『今日は施設内のみんなと遊園地に遊びに行く』って話があったのに、何してるんだよ。一ヶ月に一回のお楽しみの『親睦会』だぞ。それを抜け出すとかお前、ふざけているだろ?」

親睦会・・・・か。

まあ、確かにそうだね。

あたしは改めて目の前の狂った男を確認する。

黒髪の爽やかな見た目の少年の名前は、大橋龍(オオハシ リュウ)。
学年はあたし達の一つ上の高校三年生だ。

芸能人みたいに顔立ちもすごく良い。

そしてあたしと同じ児童養護施設で暮らす、あたしと同じ、『家族のいない子供』だ。
両親にひどい虐待をされて、挙げ句の果てにその両親に捨てられた男の子だ。

『親』と言う言葉が大嫌いな少年。

そんな龍と一緒にいるもう一人の男の子。
小柄で茶髪の高校三年生の彼は、同じく施設で暮らす榊原健斗(サカキバラ ケント)。

一人じゃ何も出来ないけど、龍と一緒ならどんな悪さもやり遂げる龍の犬。

健斗には父親はおらず、たった一人の家族の母親が事故で亡くなったらしい。
愛嬌ある可愛い見た目に、『健斗が好き』って言う女子生徒をあたしは何人も見たことがある。

そんな二人が『施設の仲間と仲良くしたい』と提案した親睦会。
月に一度外出やご飯を食べに行って、『施設の子供達と一致団結仲良くしましょう』って企画。

施設内の子供達はみんな闇を背負った子供達だから、その闇を振りほどこうと龍も健斗も必死になってくれる。

お陰で二人は養護施設の評判もいいし、職員達からの評判もいい。
児童相談所や心理士の人間からも二人の評価は高い。

それに龍、実はあたしの通う高校の生徒会長でクラスの人気者。
女の子からも人気が高いし、アイドルのような存在。

健斗も副会長として活躍していた。
龍同様に健斗も人気がある。

まあでももうすぐ卒業だから、あくまで『元』だけどね。
今は生徒会長でも副会長でもなんでもないけど・・・・。