「よぉ、燐。なんで昨日、一緒に飯食わなかったんだよ」

「それ。燐ちゃんいなかったから結構寂しかったんだぞ」

うるさい黙れ。

そう言いたかったけど、『逃げたい』と言う言葉が一番に頭の中を駆け巡っているから、そんな余裕がない。
抵抗しても意味ない。

そして余裕がないから、ただの『あたしの悲鳴』を彼らに言ってしまう。
狂った奴等を喜ばせてしまうだけの言葉。

「あたしに関わらないで!」

そう言った直後、乾いた音が響いた。

・・・・・・・。

コイツら、本気で狂っているから平気な顔であたしを殴って来やがった。

・・・・ほんとに、なんなの?

「痛い・・・・」

そして嫌がるあたしを見て、奴らはただただ笑う。

「そんなこと言うなって。俺達『施設の仲間』じゃんか」

「ホントそれ。龍くんの言う通りじゃねぇの?」

「知らない。冷たっ・・・」

そう言って二人の男の意見を否定したら、あたしがコップに入れた水を頭に掛けて来やがった。
この時期、ホント寒いからそれだけはやめてほしい。

あと服も髪もびちゃびちゃで濡れているし。

・・・・・。

だけど、あたしもどちらかと言うと、コイツら同様に狂った奴の一人だ。
『悲しみ』なんかより『怒り』が込み上げてくるから、こんな状況でも目の前の二人を睨み付ける。

睨みつけるから、喧嘩を売っているように二人に捉えられる。
「なんだよその目。俺に逆らう気か?」

龍と呼ばれている男はあたしの腕を離すと、すぐにあたしの髪を掴んできた。
こっちの方があたしの顔を殴りやすいと判断したのだろう。

龍は続ける。

「またこの前みたいにボコボコにしてやろうか?夏休みのあの日みたいにさ」

「やめて!」

あたしは髪を掴んでいる龍の手に抵抗した。
両手を使って、必死に龍の手を離そうとする。

でも龍、昔から握力は強い。
あたしの力なんて彼には全然及ばない。

「痛っ!」

そして抵抗するのに夢中になっていたから、龍のもう片方の手で頬を殴られた。
回りには人が沢山いるのに、逆にホントスゴい奴等だと改めて思う。

本当に狂った奴等だと思う。

・・・・・・・・・。

でもどうしよう。
どうやって龍から逃げよう。

そんなことを考えながら、あたしは殴られ続けた。
あたしの『痛い』とか『やめて』と言う言葉もコイツらには通用しない・・・・。

・・・・・・・・・。