「何もしてないとかいうじゃねぇよ!お前は頑張っていたじゃねぇか!調理実習の時、空の悪口を言う北條に飛び掛かったって行ったじゃねえーか!その道場で出来事も、空に暴力を振るう北條から空を守ろうとしてたじゃねぇか!お前は空の側にいてあげようと、『放課後に遊びに行こう』と提案していたじゃねえか!充分お前は頑張っていたじゃねぇか」

もうやめて。

それ以上言わないで・・・・・。

そう心の中で呟く私だけど、孝太くんはまだまだ私の聞きたくない言葉を続けてくる。

「お前、嘘のつけない人間なんだろ?だったら自分に嘘ついてどうするんだよ?嘘ついて、空のためになるのかよ?」

「そ、それは違う」

「だったら笑えよ。いつも明るく、お前らしく笑えよ。それだけで空は満足してくれるからよ。嘘付くお前なんて俺も見たくないし、空だって見たくねぇぞ」

そう言う孝太くんは、いつの間にか怒った表情から一転。

笑っていた。
幼いときから知っている優しく可愛らしい、高林孝太くんしか出せない笑顔。

「知ってるか?笑顔って伝染するんだぜ?どんな状況でも、お前が笑っていたら、必ず空も笑ってくれる。空がどんな境地に追い込まれても、お前が笑っていたら空も必ず笑ってくれる」

空も必ず笑ってくれる、か・・・・・。

確かにそうだけど・・・・。

「でも、それで空ちゃんは飛び降りようとした。あんなに笑顔を見せていた空ちゃんなのに、最後自殺しようと試みた」

・・・・・・。

私、空気を読まない変なことを言ってしまったみたい。

孝太くんの表情が歪む。

「ま、まあな。正直言って、空が笑ってくれたから俺も安心していた。だからその後の展開なんて、全く想像してなかったし・・・・」

私の反論に少し肩を落とす孝太くんの姿。
自分の主張は、私の空気を読まない一言で崩れ落ちる。

・・・・・・。

でも、流石孝太くんだ。
いつも前向きな孝太くんは、すぐに私を励ましてくれる。

「でも笑わないと人生楽しくないぜ。笑顔のない人生なんて、生きた心地がしないと思うしさ。親から貰った命、どうせなら楽しく幸せに生きたいだろ?」

親に貰った命。
確かにそうかも・・・・。