「海は北條にいじめられることを了承したのか?」

「するわけないじゃん。と言うか、もちろん小坂にも反論したよ。『小坂の友達なら、自分で北條の暴走を止めろっ』て言い返した」

私の言葉に孝太くんは何も返さなかったから、私はその後の出来事を語り続ける。

「・・・・そうしたら小坂、北條のことをペラペラと話してくれた。小坂自身が北條と出会った日の事とかさ。とにかく北條の過去を全部話してくれたよ。聞きたくない話をさ」

「それで・・・・、小坂は何て言っていたんだ?」

『孝太くんの言葉に、北條の過去を言ってもいいのかな?』と少し疑問を抱いたが、私は再び勇気を振り絞る。

何より孝太くんは『私の味方』になってほしいし、『北條の味方』にもなってほしい。

正直言って、北條も助けたい。

「北條、孤児なんだって。大好きだった両親と姉が昔、強盗に殺されたらしい」

「・・・・うそだろ?」

「ホントの話。丁度それが六年前の話だったかな。犯人はすぐに捕まって逮捕されたけど、家族を殺された北條はひとりぼっち。それで、家族を殺された北條は人を信じられなくなったんだって。今は『養護施設』で暮らしているみたいなんだけど、そこに暮らす他の人達と上手くやって行けてないないみたい」

まるで漫画のような、北條の過去。
そしてその話を聞いて、信じられないような表情の孝太くん。

言葉も完全に失っている。

そんな孝太くんを一度確認した私は更に続ける。

「だから、そんな北條を『一緒に助けてほしい』って小坂に言われた。そうしたら『空ちゃんも救える』って。北條とまた元の関係に戻れば、『弟が亡くなった空ちゃんを元気にすることが出来るかも』って」

お葬式とかで空ちゃんが学校に復帰したとき、北條と小坂が空ちゃんをいじめなかったのは彼女達も心があったから。
『家族を失う辛さ』を誰よりも知っている北條は、いじめ続けていた空ちゃんに同情した。

『これ以上空ちゃんをいじめるのは違う』と、人の心を持つ北條は感じた。

だから北條は空ちゃんと仲直りしようと道場に呼び出した。
不器用なりに、空ちゃんと仲直りしようと北條も頑張ったけど・・・・。

結局二人の思いは交差したまま。
北條も結局は空ちゃんに暴力を振るっていたし。

きっと北條は、頭で行動するより体が先に動いてしまうのだろう。
まあ、よくはないけど・・・・。

そして私と大喧嘩になって、私との対立が始まった。
『空との関係を邪魔した』と言う北條のいい加減な理由で、今度は私をいじめるようになったらしい。

そう小坂が言っていた。
まあ、本人の口から聞いた訳じゃないから、ホントかどうかは知らないけど。