「誠也さんは今後、どうするのですか?」

私の言葉に誠也さんは少し考え始める。

「そうだね・・・・空ちゃんのおばあさんと話をして、あの店の大将にでもなろうかな。・・・なんてね」

本音なのか、冗談なのか分からない誠也さんの笑顔。

と言うか、誠也さんは私達に笑顔を見せて、『辛い現実を誤魔化しているだけ』だと私は感じた。

『一緒に働いていた師匠が死んだ』って現実は、普通はあり得ないし、信じたくないはずなのに・・・。

それに、空ちゃんも自殺未遂で意識不明の重体。
大切な存在が命を落としてしまうかもしれないのに・・・・。

・・・・・・・。

だったら、私達に笑顔を見せる方がおかしいよ。
嫌でもその現実を理解しないといけないのに・・・・・。

本当は誠也さんも辛いはず・・・・。

空ちゃんのお店は今は休業中。
元々空ちゃんのお父さんと誠也さんの二人で営業していたお店だから、今は営業が出来ない。

創立者である空ちゃんのおばあさんも、『別の事で忙しい』って真奈美さんが言ってた。
今後暫く、営業を再開させることは無さそうだ。

お寿司屋さん潰れてしまうのだろうか?

・・・・・・・・。

誠也さんが自分の部屋に戻るなら、私達も帰ろうと思った。
お姉ちゃんは仕事に行ったから、家には凪が一人で留守番しているから、私も早く帰らないと。

「孝太くん、帰ろ」

「あ?あぁ。そうだな」

少し驚いた孝太くんと誠也さんと一緒に空ちゃんの部屋を出る。

『電気を消そう』かと思ったが、入れ替わりで空ちゃんを見てくれる看護師さんが現れた。
後は看護師さんに任せよう。

誠也さんも同じ病院に入院しているから、私達はエレベーターで誠也さんと別れた。
誠也さん上の階で、私達は下の階。

そして静かな他に誰もいないエレベーターに乗って、出口のある病院のロビーに出た。

そのまま外に出る私と孝太くん。
相変わらず外は寒い。

そんな中、孝太くんは私に問い掛けてくる。

夜空輝く空の下、二人で駐輪所に向かう時のこと。