「んじゃあたし帰るわ。こう見えて忙しいし」

そう言ったのは松井先生。
空ちゃんと元気な誠也さんの姿に満足したのか、松井先生は学校ではあまり見せない笑顔を溢す。

そして私達に背を向けて室内から出て行った。

でも、部屋を一歩出た所で松井先生は足を止める。

・・・・・・・。

そして久しぶりに再会した誠也さんに対して、突然の別れの言葉。

「あと誠也、アンタにはやっぱり空ちゃんの方ががお似合いだな。だからもうずっと、空ちゃんと一緒にいてあげろよ。そして、あたしとの関係はもう『終わり』にしよ」

その松井先生の言葉に、正直言って私自身は耳を疑った。
『関係は終わり』ってつまり・・・・。

一方の誠也さんは冷静だった。
表情を一つ変えずに、笑顔で松井先生の背中を見送る誠也さん。

「ありがとうな、裕香」

最後に誠也さんはそう呟いた。
松井先生も止まった足を再び動かし、病室から消えていく。

松井先生が居なくなって、空気が少し重く感じる・・・・。

原因はもちろん松井先生の最後の言葉だろう。
『あたしとの関係はもう終わりにしよ』って言葉。

それってつまり、『別れの言葉』・・・だ。

二人がどれ程の期間付き合っていたとか、どんな過去を過ごしたかは私には分からないけど、二人にとってはとても大きな言葉。
人生を左右するかもしれない大きな大切な言葉。

そんな言葉を聞いた誠也さんは天を見上げた。
病室の天上を見上げながら、何かを考えているみたい。

そして少ししてから誠也さんは小さく頷くと、私達に笑顔を見せる。

「俺もそろそろ部屋に戻ろうかな。俺は明日には退院出きるみたいだし」

退院か・・・・。

だったら誠也さんの行動も聞いておこう。
これから誠也さんは空ちゃんのためにどう動くのか聞いてみよう。