「わりぃ、遅れた。って、なんで松井先生?」

聞こえた男の子の声の持ち主は、やっぱり孝太くん。
彼も何故か制服のまま。

そんな孝太くんに、松井先生は私の時と同じ言葉を問い掛ける。

「なんだよ。あたしがいたら不満か?」

「驚いただけっすよ」

「なんだよそれ」

松井先生、それ私の時と同じ言葉・・・・。

そう思った私は苦笑いを浮かべながら立ち上がった。

とりあえず空ちゃん元へ向かおう。

四一五室。

そこには『美柳空』と書かれた札が張り出されていた。
どうやらここが空ちゃんが眠る病室みたい。

その病室に、私は手を掛ける。
ゆっくりと扉を開けてみる・・・。

するとそこには、左手をギブス固定させた男の人の姿があった。
優しく私達に笑みを見せてくれる目の前の人の名前は、田中誠也(タナカ セイヤ)さん。

「やあ。海ちゃんに孝太くん。んで・・・・」

誠也さんの顔は何故かどんどん青ざめていく。
どうやら松井先生と認識があるみたいだ。

松井先生も誠也の姿を見てから、何故だか苛立ちを感じる・・・。

って、なんで?

「よぉ。元気にしてるのか?死にかけの寿司職人。あとウチの生徒に浮気をしたクズ男」

その松井先生の言葉の直後、誠也さんは細い目で松井先生を睨む。
空ちゃんも見た事がないと思われる誠也さんの表情・・・・・。

「うるさいな・・・・。ってか久しぶりなだな裕香」

「だな。まさかこんな形で再会するとは思わなかったけど」

再会。
その言葉に引っ掛かった私は、松井先生に問い掛ける。

ってか『ウチの生徒に浮気をしたクズ男』ってどういう事?

「えっ?松井先生と誠也さんって知り合いですか?」

「知り合いって言うか彼氏彼女の関係?カップル?なんだ?」

カップル。

その松井先生の言葉を聞いて私は一瞬で動揺した。
顔もリンゴの ように真っ赤に染まる。

同時に二人の『まさかの関係』に叫んでしまう。

「えっ、えー!嘘でしょ?」

「海うるせぇよ」

「ご、ごめん。で、でも・・・・」

孝太くんの声に、我に帰る私。

ってか、冷静にそう言う孝太くんも顔が赤いよ?