先に空ちゃんの病室に向かっても良かった。
でも何故だか一人で空ちゃんの所に行く勇気が出てこないから、私は病院のロビーで孝太くんを待った。

適当にロビーの椅子に腰掛ける。

そして待つこと五分。

・・・・・・。

私に声を掛けてくれたのは、孝太くん・・・・・ではなかった。

ちょっぴり苦手かもしれない、私の担任の先生。

「おう。夜遅くまでの外出は控えろよ」

「松井先生!?」

「なんだよ。あたしが居たら不満か?」

「いや、その。ちょっと驚いたなって」

「なんだよそれ」

私のクラスの担任である松井裕香(マツイ ユウカ)先生。
生徒のことを一番に考えてくれる若い先生で、今クラス内で起こっている闇に立ち向かっている先生だ。

具体的な解決策はまだないみたいだけど、必要以上に私達の話を聞いてくれる先生。

空ちゃんも私も、何度も松井先生の言葉に助けられたっけ。

松井先生は何故だか私の隣の席に腰掛けた。
ここに来た理由は、私と一緒なんだろう。

そして私に問い掛ける。

「なあ海ちゃん。どうやったらクラスの問題を解決出来ると思う?」

「えっ、えーっと」

突然の話題に私は一瞬と驚いたが、すぐに答えを探そうと知恵を絞る。
『自分なりの言葉』を言えばいいと思ったけど・・・・。

・・・・・・。

そのクラスの問題の『被害者』となっている私は、クラスの問題を思い出しただけで頭が痛くなった。

だから私、投げ捨てように曖昧に答えてしまう。

「わ、わかりません」

松井先生は小さく頷きながら答える。

「そうか。まあ、そうだよな。あたしだって何一つわかんないのに」

その言葉の直後、松井先生は大きなため息を一つ吐いた。
まるで『いつになったら雨は止むんだろう』と、不気味で真っ黒な雲が被う空を見つめているみたい。

最近寝れていないのか、松井先生の目の下に隈が目立つ。
松井先生、相当疲れているんだろう・・・・。

どうやら本気で松井先生は『クラスの問題』について悩んでいるみたいだ。
おまけに教え子の空ちゃんは自殺未遂。

・・・・・・・。

こんなの普通、頭がおかしくなっちゃうよね。

と言うか、他の教師達はみんな『知らない顔』を浮かべているのだろうか?
誰も松井先生を手を差し出したりしないのだろうか?

やっぱり自分は関係ないと他のクラスのいじめについては知らない顔をしているのだろうか。

って、私がそんなことを言える立場じゃないよね。

何より自分の問題だし。

私もお手上げの現状だし、ホントどうしたらいいのだろうか。

・・・・・・・・。