「よし、今日の晩御飯は明日の朝食にしよう!それで今からたこ焼きパーティをしよう!ってなわけで凪ちゃん、海お姉ちゃんが大好きなたこ焼き機用意してくれる?あとキッチンからラップが欲しいな」

「らじゃー!」

お姉ちゃんの言葉の通り、凪は急いで台所からラップを持ち出すと、そのラップをお姉ちゃん渡す。

そして次は隣の部屋に向かった凪はたこ焼き機を取りに行った。
隣の部屋は和室なんだけど、今は殆ど物置だ。

昔、お父さんが暮らしていた和室の部屋。
一方でお姉ちゃんは凪か受け取ったラップで、まだ暖かい晩御飯をラップしていく。

私と凪のために作ってくれた晩ご飯なのに・・・。

・・・・・・。

そんなお姉ちゃんに、私は恐る恐る聞いてみる。
いつの間にか私の視界が涙でぼやけている・・・・・。

「お姉ちゃん、・・・・いいの?」

お姉ちゃんは大きく頷きながら答える。

「もちろん。海が辛かったら、私も協力するわよ。出来ることは限られるけど、『妹を元気にすること』だけは自信があるから。それに私の前で涙見せたら、どうなるか今から思い知らせてやるんだからね。絶対にまた海を元気にさせてやるんだからさ!」

お姉ちゃんは私に優しい笑みを見せてくれた。
小さい時から何度も見てきた、お姉ちゃんの優しい笑顔。

辛い時はいつもの笑顔で私を励ましてくれたっけ。

そしてその笑顔に、私は何度助けられただろうか・・・・・。

・・・・・・・。

小学生の時、『孝太くんの一件』でいじめられていた私はずっと強がっていたけど、そのお姉ちゃんの笑顔を見たらいつの間にか泣いてしまった事がある。
『もう我慢しなくていいんだ』って思ったら、限界だった。

ホント、この笑顔見せられたもう嘘なんてつけないよ。

「うん・・・」

溢れる涙を拭い、私は小さく頷いた。

一方でお姉ちゃんは準備を進める。

「さあ、早く準備しないと。じゃなきゃ私も仕事があるし。凪、たこ焼き機はあった?」

「あったよ!おっと」

「あっ!ばか凪!」

たこ焼き機を抱えて、小走りでリビングにやって来た凪なんだけど、突然凪は転けた。

どうやら捲れた絨毯に、足が引っ掛かったみたい。
同時に転けたせいで、凪の持っていたたこ焼きはいつの間にか宙を浮いていた。

そして宙に浮いた重いたこ焼き機は、理不尽に私の頭に直撃する。
凪の姿に呆気に取られていたから、私は避けることやキャッチすることなんて出来ない。

そもそも私、なんでたこ焼き機に襲われているのか理解出来ない。

・・・・・。