「海、今日は早かったね。お見舞い、行ったんじゃないの?」

お姉ちゃんの言葉に、私は曖昧に言葉を返す。

「あーうん。結局行かなくなったって言うか、みんな帰っちゃったって言うか・・・」

「どうして?」

空ちゃんの病院に行きたくなくなった。
そう素直に言えば話はすぐに進むのに・・・。

バカ正直な私は言葉を探し続ける。

「まあ、色々と喧嘩したって言うか。あーでも、喧嘩したって訳じゃなくて。ただお互いに『自分の意見を言っただけ』って言うか。そこから空気が最悪になったって言うか」

私の曖昧な言葉の直後、お姉ちゃんは笑った。

そして意図も簡単に『私の心の中』を覗いてくる。

「あー、だからそんな『死にたい』とでも言うような顔していたのね」

「『死にたい』とかそう言うんじゃなくて」

「でも実際に辛いんでしょ?」

「そ、そんなことは・・・」

ヤバイ、お姉ちゃんに責められて言葉が詰まった。
凪もいるし、弱音なんて吐けないのに。

私もお姉ちゃんなんだから、もっとしっかりしないといけないのに・・・・。

「海お姉ちゃん、泣いてる」

・・・・・。

ホント、情けない私だ・・・・・・。

凪の一言で、私は家族の前で涙を落としている事に気が付いた。
同時に、『何をしてもダメな私』だと改めて思わされる。

と言うか私、別に意地なんて張らなくていいのに・・・・・・。

・・・・・。

気が付けば、私は情けない自分を上書きするように『言い訳』をしていた。

「あー!これはただの汗って言うか!海お姉ちゃん、走って帰ってきたからさ!最近寒いから体を暖めようかなって」

そう言っても目の前の二人は笑ってくれない。
ずっと心配そうな顔で私を見つめている。

そして少し間を置いてから、お姉ちゃんはため息を吐いた。

ため息を吐いたお姉ちゃんは、『優し過ぎる』から怖い・・・・。

「相変わらず嘘の下手くそな子。姉妹に嘘ついて、どうするのさ」

「ごめん・・・なさい」

下を向いて謝っても、私の気持ちは何一つ変わらない。
ただただ『楽しい食卓を最悪な空気にしてしまったこと』に対して、罪悪感が生まれるだけ。

お姉ちゃんが言った通り、本当に『死にたい』かも。

本当に今の私、生きていて何にも良いことがないし。

・・・・。

そんな私にお姉ちゃんは一つ提案してくれる。

妹の私を笑顔にさせるだけの、お姉ちゃんの変わった行動。