「おい。流石に机と椅子を隠すってやりすぎだって」

「誰だよ。ちゃんと戻しておけよ。じゃないと、美柳ちゃんが泣いちゃうぞ」

「まあ、美柳だからいいんじゃない?アイツ、何をされても無愛想だし」

「あー確かに。怒りとか悲しみとか無さそう。まるでロボットみたい」

「ってか美柳って生きているの?存在薄すぎるから、もう死んだのだと思ってた」

「ってことは目の前の美柳は幽霊?」

「きも。美柳と目を合わせたら呪われるぞ」

一方の私は『またか』と言うのが素直な言葉。
クラスメイトのノイズの言葉通り、いつも『無愛想』な私には、現状に対して特別な想いはない。

『辛い』とか『悲しい』とか、そう言う気持ちはあんまりない。

昔からそうだ。
どうやって笑ったらいいのか分からないし、どうやって喜んだらいいのか分からない。

今日のようにクラスメイトにいじめられていても、感情のないロボットのような私は、悲しむことも泣くこともない。

・・・・・。

それとも私、クラスメイトの言う通り本当にロボットなのかな。
人間と見分けのつかない見た目に作られた精密なロボットなのかな。

それすら、今の私には分からない・・・・・・。

私の教室である二年一組は二階に位置する。
ちなみに下の一階は三年生の教室だ。

その私の教室の窓から下を見下ろせば、私の机と椅子が無造作に投げ捨てられていた。
引き出しの中に入っていた私のノートや教科書などは、ぬかるんだ地面に落ちて泥がついている。

確か昨日は一日中雨だったっけ。
三年生の生徒も窓から顔を出し、『なんでこんな場所に机と椅子があるんだ?』って不思議に思っている。

そんな光景を見た私は静かに教室を出て、その机と椅子の元へ向かった。
上級生の視線が気になったが、地面に落ちた私のノートや教科書を拾って引き出しの中に戻すと、何事もなかったかのように机と椅子を運ぶ。

でも流石に机と椅子を一緒に運べないから、一回目は机で二回目は椅子と二回に分けて運ぶ。
昔から力は全くないし、力仕事なんてした事ないし。

体育の成績も散々だし、部活もしてないし。
勉強も出来ない馬鹿だし。

そして教室に机と椅子を運び終えた頃には、再びノイズが聞こえた。
私の姿を嘲笑う、うるさいクラスメイトのノイズ。

ちょっとうるさい。